2024年 4月 24日 (水)

繊維業界

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現状

輸入増と中国進出で生産は大幅縮小

  日本国内の繊維産業は大きな転機を迎えている。2003年の化学繊維生産高は、前年比7.1%減の131.6万トンとなった。合成繊維は115.7万トンで同7.7%減、セルロース繊維は15.9万トンの同2.1%減である。合成繊維の国内生産量はピークの97年に比べて4分の3にまで縮小した。大幅縮小の理由は中国からの低価格製品の輸入増加と日本企業の中国への生産拠点のシフトである。

日本の繊維産業は、完全な構造不況業種に陥っている。

カジュアルウェア小売り業者ファーストリテイリング社のユニクロ渋谷店
カジュアルウェア小売り業者ファーストリテイリング社のユニクロ渋谷店

  かつて輸出で外貨を稼ぐ有力な産業であった繊維産業が、輸入超過に転じたのは1987年のことである。それ以降、繊維の輸入は増え続け、99年には国内の繊維市場の6割を占めるまでに至った。
  繊維製品の輸入急増をもたらしたのは、衣料品などの2次製品だ。輸入繊維に占める2次製品の比率は、90年には75.8%だったのが、95年には89.4%と増加の一途をたどっている。最大の輸入先は中国。繊維製品の輸入額に占める中国の割合は64.3%と、群を抜いている。
  このように、繊維の2次製品の輸入が急増している背景は、低価格を売り物にする郊外型カジュアル衣料店、アパレルメーカーなどが中国に生産拠点を設立して、これを積極的に活用しているためだ。中国が日本のアパレルメーカーの生産拠点になっている理由は、安い労働力、現地での技術の向上、国営紡績工場の生産性の向上、原料の大半を中国国内で調達できるようになったことなどだ。特に日本の10分の1、20分の1と言われる労働者の安い賃金や、勤勉な性格は、日本企業にとって最大の魅力となっている。

非繊維を中心に付加価値の高い分野に力を注ぐ

  日本の大手繊維メーカーは、繊維部門の低迷をカバーするために、成長性の高い非繊維部門に経営資源をシフトさせている。繊維事業では、不採算分野の合理化や生産拠点の海外移転を進める一方で、SPA (製造小売業)など川下産業への進出を図ることで、抜本的な事業構造の改革に取り組んでいる。また、ナノテク繊維をはじめとする高付加価値製品の研究開発と、自動車、メディカルなど非繊維分野での成長事業の育成に力を注いでいる。

  東レでは、全体に占める繊維部門の売上高が4割、利益面では全体の3割と、他社に比べて本業重視の姿勢を崩していない。他社が繊維事業から撤退する中で、反対にシェアを高めて採算改善に努める一方で、繊維事業の中でも特に先端技術の材料に注力することで高付加価値分野の伸張にも取り組んでいるのが特徴だ。
  帝人は、売上高で繊維が5割強を占めるが、稼ぎ柱は収益力の高い医薬医療事業だ。繊維部門の合理化を急ぐ一方で、フィルム・メディカルなど非繊維事業が利益の約7割をしめている。旭化成は、2003年10月から7分社・持ち株会社制へ移行し、繊維事業も本体から分離された。ただし連結決算ベースでは、繊維事業は業界で最大化の売上規模を誇る。繊維以外では、化学、住宅・建材・電子材料・医療などへ多面的な展開を図っている。
  カネボウはアクリルに続き、天然繊維からも撤退。現在は産業再生機構のもとで再建途上にある。三菱レイヨンは、化成品・樹脂事業が約4割を占めるが、アクリル系の事業を柱に炭素繊維など付加価値の高い分野に力を注ぐ。クラレは、酢酸ビニル系の樹脂エバールが世界市場の7割を占め、ポバールでは約3割のシェアを誇る。

将来を展望するための3つのポイント

ポイント1
本業で高付加価値分野へシフトできるか

  好例が東レだ。東レは現在、世界最大の炭素繊維メーカーである。日産自動車の「フェアレディZ」など2車種に採用されたのを機に、炭素繊維を使った量産車向けの駆動部品などを開発して、世界の自動車メーカーに供給している。炭素繊維はこのほかゴルフクラブのシャフトやテニスラケットなどのスポーツ用品や航空機関連などへも需要拡大が期待されている。東レでは10年後に1000億円の事業に育成する計画だ。

ポイント2
非繊維分野をさらに拡大して多角化できるか

  大手メーカーの繊維事業の売上高比率はすでに30~50%にまで低下しているが、これからもさらに比率の低下は続くだろう。すでに旭化成(繊維事業比率は9%)は、株式市場などでは、繊維メーカーというよりは、化学メーカー、住宅メーカーとして受け止める投資家が多い。帝人ではすでに医薬医療分野が利益柱として育っており、今後はM&Aの積極化などで産業用繊維、情報関連の強化を目指す。独自製品が多いクラレでは人工皮革、化成品、メディカル、ユニチカでは生分解プラスチック、日清紡ではブレーキ、紙製品、バイオなど非繊維分野の拡大にさらに力を入れていく意向だ。

ポイント3
川中、川下への展開で活路を見出せるか

  素材を生産する繊維メーカーを川上産業だとすれば、織物、編み物、染色の分野を担当するのが川中産業だ。川上に位置する繊維メーカーの中には、一段階“下流”の川中分野へ進出することで活路を見出そうとする動きも活発だ。ユニチカやグンゼはその典型だ。ユニチカは織物、編み物分野で高い実績をあげている。グンゼは現在、紳士肌着では業界トップの地位を確立。東レや帝人は、インテリア大手の川島織物に出資している。川島織物は京都の西陣織の伝統技術を活かし、カーテン、自動車シートの分野に強みを持つ会社だ。特に自動車向けの内装材は日本の自動車メーカーの生産拡大とともに大きく成長している。その恩恵は素材を提供する川上企業にも波及することは間違いない。

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