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厳しい目にさらされるソニー 「技術力」奪還は可能か

ソニーの出井伸之会長兼グループCEO
ソニーの出井伸之会長兼グループCEO

  「ソニーの株主は厳しい。他社並の業績では満足してもらえない」とソニー会長兼CEOの出井伸之氏は愚痴をこぼすことがある。東京株式市場では、ソニーの株価は夏以降、一進一退が続いている。投資家のソニーを見る目は厳しい。
  日本の大手エレクトロニクス各社と比べると、ソニーの業績はそれほど見劣りしない。第2四半期まで(4-9月の6カ月累計)の当期純利益は前年同期比2.2倍の764億円で、松下電器産業の562億円、日立製作所の411億円を上回った。また日本では年度の業績見込みを各社が公表する習慣があるが、それによるとソニーの当期純利益は1100億円で、エレクトロニクス各社の中ではトップである。

本業のエレクトロニクス部門で「競争に負けた」

  にもかかわらず、アナリストの多くはソニーの業績に対して「力強さを感じない。今後が不安である」というネガティブな評価を下している。その理由は、本業であるエレクトロニクス部門が伸び悩んでいることにある。デジタル家電が大きなブームとなり、松下などライバル各社は大幅な増益を達成したが、ソニーのエレクトロニクス部門は逆に減益だった。そればかりか日本市場では売り上げを前年同期比で7%も落としてしまった。ソニーの利益は「スパイダーマン2」の大ヒットによる映画部門の増益や、金融部門の好調によるものであり、本業のエレクトロニクス部門では「競争に負けた」と見なされているのである。
 かつてのソニーは「技術力に優れた企業」というイメージがあり、これが「ソニー・プレミア」となって株価を押し上げていた。だが現在のソニーは、デジタル家電の技術面で優位性がない。

次世代技術で「優位性」奪還を目指す

  ソニーは家庭用ビデオ・カセット・レコーダー(VCR)の分野で、松下のVHS方式に敗れた。さらにビデオ・ディスクの分野でも、東芝・松下連合のDVD方式に圧倒された。この2度の敗戦により、家庭用のレコーダー市場のトップメーカーから、ワン・オブ・ゼムの企業に転落した。さらにソニーは、ブラウン管式テレピの成功に安心して薄型ディスプレーへの先行投資を怠った。この結果、液晶パネル(LCD)でもプラズマ・ディスプレー・パネル(PDP)も自社では生産できず、他社から供給を受けるだけの企業になってしまった。これでは独自の技術力を発揮するのは難しい。こうした失敗の結果として「ソニー・プレミア」ははげ落ち、投資家の期待を裏切る結果となってしまった。

  ソニーは今、技術的な優位性を奪還する努力をしている。DVDの次世代規格である「ブルーレイ・ディスク(BD)」では主導的存在だ。また次世代の薄型ディスプレーとして期待される「有機発光素子(有機EL)」開発でも世界の先頭を走っている。しかし、こうした次世代技術を採用した商品が市場で主流になるまでには、2-3年かかると見られている。それまでの間、ソニーは「ワン・オブ・ゼム」の企業として、「プレミア」抜きで競合メーカーと戦わなければならないのである。