J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

トヨタ新ブランド「レクサス」はべビーブーマーを狙う

  トヨタ自動車が北米市場で展開する高級車ブランド「レクサス」を日本に逆上陸させる。標的のひとつは、まもなく定年退職を迎える「団塊の世代」だ。
  2005年8月30日に、第一陣となる143拠点の「レクサス店」を一斉にオープン。年内には151拠点、06年をめどに180拠点にまで店舗ネットワークを拡充し、高級車販売の底上げを目指す計画だ。

団塊世代を狙う新ブランド「レクサス」(写真は「レクサス IS350」)
団塊世代を狙う新ブランド「レクサス」(写真は「レクサス IS350」)

  米国と異なり、事業基盤の確立している母国市場でトヨタが敢えて、新たなブランド創造に挑戦するのは、2つの狙いがある。ひとつは近い将来の潜在的需要層の獲得だ。日本では「団塊の世代」と呼ばれる太平洋戦争後生まれのベビーブーマーたちが07年以降、相次いで定年退職を迎える。これまでのトヨタ車とは一味違う高級車を提供して、多額の退職金を手にするこれらの需要層を主要顧客として取り込もうという戦略である。

日本の高級車市場で「欧州勢」を突き放す戦略

  もうひとつは、対欧州車戦略だ。現在、トヨタは日本国内市場で45%前後のシェアを持ち、トップを独走する。しかし、自動車メーカーにとってきわめて利幅の大きい単価500万円以上の、いわゆる「プレミアムカー」と呼ばれる高級車市場だけをみると、そのシェアは30%弱に低下。逆に、全体では8%程度に過ぎない「ベンツ」「BMW」「アウディ」を中核とする欧州勢のシェアは、約60%にも上昇する。こうした日欧逆転の構図を突き崩すには、従来の「TOYOTA」ブランド車では役不足というわけだ。
  もっとも、トヨタがレクサス店に投入する高級車「LS」「GS」「IS」「SC」の4つの車種はそれぞれ「セルシオ」「アリスト」「アルテッツァ」「ソアラ」の名前で従来から国内販売されてきた。新ブランドの展開に合わせていずれもフルモデルチェンジするとはいえ、ユーザーがそれにどこまで「プレミアム」を見いだすかは、不透明だ。

米国では高級車部門で5年連続販売台数1位

北米市場で展開されているレクサスの販売店
北米市場で展開されているレクサスの販売店

  「レクサス」ブランドは、世界最大の自動車市場である米国での事業基盤を強化しようと1989年に導入された。それまでの「TOYOTA」ブランド車と一線を画し、トヨタ車=小型・大衆車というイメージを一新した。ゼネラルモーターズ(GM)フォードなど米ビッグスリーの牙城とされた東海岸のエスタブリッシュメントなどの富裕層マーケットに切り込む狙いがあったとされている。

  そしてこのブランド戦略は見事に成功する。95年から04年まで、「レクサス」ブランド車は、米調査会社JDパワー&アソシエイツによる耐久信頼度調査で10年連続トップ。00年からは高級車部門で5年連続販売台数1位の座に君臨し続けている(04年の販売実績は29万台)。今回の逆上陸は、こうした成功体験を引っ提げての“凱旋”となるわけだ。