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ネット広告だけで 車は売れる

   広告媒体としてのインターネットの存在感が強まっている。トヨタの北米で最も売れた車種はテレビ広告を出さず、ネット広告だけにしぼっていた。こんな話が業界を震撼させ、「ネットだけで車が売れる。このままではテレビ広告はガタガタだ」と民放テレビ局は危機感を強めている。

   日本のネット広告は2004年に売り上げ1814億円となりラジオ広告を上回った。05年は5割アップの2,722億円になると予測されている。 日本の広告市場は「4マス」といわれるマスコミ4媒体(テレビ、新聞、雑誌、ラジオ)が押さえてきた。04年にネット広告の売り上げが調査を始めた96年以来の最高となり、初めてラジオ(1,795億円)を抜いた。

トヨタで最も売れた車種はテレビ広告を出していなかった

ネット広告の急伸に、民放各局は戦々恐々だ(写真: 日本テレビ)
ネット広告の急伸に、民放各局は戦々恐々だ(写真: 日本テレビ)

   ネットに広告を出す企業はこれまで携帯電話など情報通信、求人広告など人材サービス、金融が中心だったが、ここへきて自動車、化粧品、飲料などが増えてきた。これらの業種は広告予算、テレビ広告への出稿量とも多い企業だけに民放テレビ局は神経をとがらせている。
   ネット広告の表現方法はこれまでバナー広告が中心だったが、検索のキーワードに連動した広告を掲載するサービスが人気となっている。これは検索サイトでキーワードを入力すると、検索結果の画面に関連した広告が表示される仕組みだ。
   米国のネット広告市場は日本以上に拡大傾向にある。最新の調査では、05年7~9月期の市場規模は前年同月比34%増の31億ドル(約3,500億円)と初めて30億ドルの大台を超えた。通年では120億ドル強と予測され、雑誌広告と拮抗するとみられている。
   このネット広告の伸びを引っぱるのは自動車と旅行業。フォードGM、日本のトヨタなどは広告予算に占めるネット広告の比率が徐々に高まっている。09年には米国のネット広告市場は200億ドル(約2兆3,000億円)を超える見通しだ。
   米国トヨタのある車種のネット広告が日本で強い関心を集めている。「トヨタの北米で最も売れた車種はテレビ広告を出さずネット広告だけにしぼった」という話がきっかけだった。これを聞いた民放幹部は震撼した。「このやり方をトヨタが日本でやり、日産ホンダが追随したら民放経営はガタガタになってしまう」。

米国大企業はテレビを減らしてネットを増やす

   トヨタが北米でネット広告を展開したのは若者向けのサイオン、bB、イストという北米のみで販売している3車種。この3車種についてはネットで情報発信して口コミで広げていく宣伝戦略をとったという。日本での受け止め方は"過大評価"があったようが、ネットだけに頼ったクルマが売れたのは事実だった。
   米国のトヨタが若者向けの車種の宣伝手法をネット広告にしぼった背景には、米国の若者のテレビ離れがある。若者はテレビを見なくなりネットに接触する時間が増えている。トヨタに限らず米国の大手企業はテレビ広告を減らしてネット広告予算を2~5割増やしている。
   こうした影響が日本に及んでいる。05年に起きたライブドアによるニッポン放送株買占め、楽天TBSへの経営統合提案などネット系企業の"民放テレビ侵略"はネット広告の拡大がその背景にある。