J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

ダイエー再建視界不良

   経営再建中の大手スーパー、ダイエーは8年ぶりの赤字に陥った。悲願の「安売りからの脱却」は実現できず、再び目先の売り上げ確保に走る心配が出ている。産業再生機構の支援から1年、ダイエーの未来は?

ダイエーが展開する食品スーパー「グルメシティ」。ダイエーは食品事業を強化している
ダイエーが展開する食品スーパー「グルメシティ」。ダイエーは食品事業を強化している

   2006年4月12日に発表した06年2月期の単体決算は、61億円の営業赤字だった。単体営業赤字の主因は、販売促進費の増加だ。ダイエーでは最大商戦の12月に「20億円還元セール」を実施した。同月の売上高は前年比6%増まで回復したが、一方で経費も増加。これまでの売り上げ低迷をカバーできなかった。  「再建計画はむしろ前倒しで進んでいる」。樋口泰行ダイエー社長はそう強調する。有利子負債は前期末の1.4兆円から8,200億円まで削減。不採算店を53店閉鎖、05年11月には1,268人の希望退職を実施した。中核事業以外からの撤退を掲げ、レジャーや不動産を中心に子会社の売却・整理も進めた。

「昔のダイエーに戻った」

   連結決算ではカード事業のオーエムシーの貢献で、06年2月期の営業利益は最高益を更新した。ただ逆にその分、単体の低迷が目立つ。ダイエーの課題は、何よりも営業力強化なのだ。
   同社では昨秋から存続店の改装を順次実施。不振の衣料品でユニクロと提携するなど、テナントを積極導入して効率化を図っている。スーパーの競争力を左右する青果、デリカについては、社長直轄プロジェクトを立ち上げた。そのためか、12月以降は食品の売上高が4カ月連続で前年実績を維持。ダイエー幹部は「青果については他社より競争力が出てきた」とその成果を強調する。
   だが、単体の決算実績が示すとおり、先行きは決して楽観視できない。主力取引メーカーの幹部は、12月以降の営業施策を「昔のダイエーに戻った」と表現する。
   ダイエーは昨春、経営トップとして外車ディーラー社長の林文子氏、日本HP社長の樋口氏を異業種からあえて招いた。そこで掲げたのが「安売りからの脱却」だった。しかし完全なオーバーストア(店舗過剰)の中、安売りなしに売り上げを伸ばすことは極めて難しい。05年10月までダイエーの既存店売り上げは前年実績を大幅に下回っており、12月以降の販促強化が、目先の売り上げ確保のための戦略の揺り戻しと見る向きは少なくない。

再生機構が株式売却に動く

   今回ダイエーでは新設した催事子会社に800人を出向させ、人件費を追加削減する。本業回復を印象づけるために、単体業績の改善を急ぐ狙いだ。ただし相次ぐ人事リストラは、社員の士気を低下させかねない。現場では次々と担当者が入れ替わり、商品知識を持つバイヤーが少なくなっている。中期的にダイエーの営業力低下に結びつく懸念も残る。
   あるメガバンクの幹部は「再生機構が株式売却を急いでいることが気になる」と語る。不良債権処理の進展、景気回復を背景に、再生機構は当初の計画より1年早く06年春にも解散する方針が固まっている。保有するダイエー株も年内に売却する方針だ。
   再生機構の保有株については、現在ダイエーのスポンサーである大手商社、丸紅が優先購入権を持つ。ただし丸紅は現状、態度を保留している。
   「ウォルマートがまたダイエー買収に動き出している」。業界ではすでにそんな噂が上がる。ダイエーが営業力強化につまずき、再建に失敗すれば、ダイエー株の行方が業界再編の新たな火種になる可能性がある。