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「ハンカチ王子」も実行 高濃度酸素がブーム

   夏の甲子園で「ハンカチ王子」が「酸素カプセル」を使用したり、「酸素入り水」がよく売れるなど、いま「酸素」に注目が集まっている。そんな中、「高濃度酸素を吸うと記憶力がアップする」という実験結果も発表され、「酸素ブーム」が加速しそうだ。

   通常空気に含まれる酸素の割合は21%だが、「酸素カプセル」では、30%と多めの酸素を含んだ空気を送り、気圧を1.3気圧まで上げる。1時間ほど横になると、筋肉痛がとれ、リラクゼーションに効果があるという。

ベッカムや松坂も利用

酸素吸入器「酸素エアチャージャー」で記憶力アップ?
酸素吸入器「酸素エアチャージャー」で記憶力アップ?

   02年サッカーW杯直前に左足を骨折したイングランド代表のデビッド・ベッカム選手が使用したほか、大リーグへの移籍が確実な西武松坂大輔投手といったスポーツ選手が利用したことで知られる。
   夏の甲子園を制した早稲田実業の「ハンカチ王子」こと斎藤佑樹投手が、大会の宿舎で使用していたことが報じられると、さらに「酸素カプセル」は注目を浴びるようになった。早実ナインにカプセルを貸し出した「日本ライトサービス」では、週刊朝日(9月8日号)に対して、

「再試合の(8月)21日から問い合わせが始まり、22日からはパンク状態。数百件の問い合わせをこなしきれない状態です」

   と、カプセルの人気ぶりを語っている。

   実は「酸素カプセル」、医療用にも実用化されている。「高気圧酸素治療」と呼ばれ、2気圧~2.8気圧の環境で、100%純度の酸素を吸い込む。ハンカチ王子などが使っていたものは「1.3気圧で酸素の割合が30%」なので、医療用とは別物であることがわかる。この酸素治療は、突発性難聴、脳卒中なので脳が腫れる脳浮腫(のうふしゅ)、心筋梗塞(こうそく)など、さまざまな病気に保険が適用されている。

   ただ、そこまで大規模にやらなくても、比較的手軽に酸素吸入の恩恵を受けることはできそうだ。

酸素吸入で記憶力が向上

   松下電器産業は10月11日、同社の酸素吸入器「酸素エアチャージャー」を使いながら学習すると記憶力が向上することが確認できた、と発表した。大手予備校の代々木ゼミナール名古屋工業大学との共同実験で確認した。このエアチャージャーは酸素濃度を30%にまで高める。酸素カプセルと同じ濃度だ。代ゼミの生徒約80人を2つのグループに分けて英単語の試験を行ったあと、20分間学習して再試験、結果を比較した。高濃度酸素を吸いながら学習したグループは、そうでないグループに比べて、正解数の増加が15%上回ったのだという。

   そうは言っても、「酸素入り水」には要注意だ。国立健康・栄養研究所医学論文を調べたところ、「効果」を確認することができなかったのだ。運動能力に関して実験した3つの論文、体内組成に対する影響を調べた2つの論文では、いずれも「運動能力に関して酸素水の摂取は影響しない」「酸素水の効果を特定できない」などと結論づけている。同研究所では、

「酸素は、0℃1気圧において49mL/L(70mg/L)の溶解度を持つ気体で、温度の上昇と共に水に溶ける量は減少し、同じ温度においては気圧に比例して水に溶ける量は増加します。従って低温で保存し、開栓後はできるだけ早く飲まないと酸素はどんどん抜けていくことになります」

   とコメントしており、どうやら「酸素水では酸素は摂れない」ということのようだ。

   「酸素ブーム」とは言っても、「酸素」と名前が付くものは何でも健康的、ということにはならなさそうだ。