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テレビ局出資規制 朝日、日経が「抵抗勢力」

   総務省のデジタル化の進展と放送政策に関する調査研究会が、民間の放送局が持ち株会社を設立して複数の放送局を傘下に置くことを認める報告書をまとめた。地方局の経営を支援するのがねらいだが、新たに盛り込まれた株の出資規制によって、保有株を手放す対応が求められるテレビ朝日テレビ東京の最大株主である朝日新聞日経新聞は猛反発している。

   同放送政策研究会は地上デジタル放送が完全デジタルに移行する2011年7月が迫るなか、1つの企業が複数の放送局の大株主になって経営を支配することを禁じた「マスメディアの集中排除原則」の緩和を検討してきた。財務基盤が弱い地方局がデジタル化の投資負担に耐えられるようにするのがねらいだ。

ネット大手の楽天も反対

日経新聞、出資規制に猛反発
日経新聞、出資規制に猛反発

   最終報告は持ち株会社を解禁して(1)傘下にキー局と系列地方局が子会社として連なる(2)ラジオや衛星放送などのメディアも子会社になる(3)複数の地方局同士が傘下に入る-という3つのケースを例示。総務省は来年の通常国会に放送法改正案を提出、07年度中に実施する。
   民放連は「経営の選択肢が増える」と歓迎ムードだ。ただ、「緩和」の一方で、報告書に盛り込まれた「20%以内」という新たな出資規制をめぐって朝日、日経など民放キー局の主要株主が猛反発している。TBS株の19%超を保有するネット大手の楽天も「放送と通信の融合の流れに逆行する」と反対している。

   この20%規制を盛り込んだのはライブドアや村上ファンドなどによる放送局買収劇がきっかけだった。公共性の強い放送局の買収が再び起こるのを避けるねらいがある。朝日と日経は現在、それぞれテレ朝、テレ東に対する出資比率が33%を超えている。
   報告書通りに法改正が行われると、テレ朝やテレ東が持ち株会社に移行した場合、朝日や日経は保有株を手放す必要が生じ、最大株主としての地位も権限も縮小する。新聞社の「植民地」としてずっとやってきた”天下り”も好き勝手にはいかなくなる恐れもある。

放送法改正作業は難航しそう

   テレ朝は96年6月、ソフトバンクの孫正義社長と豪メディア王、マードック氏に発行済み株式の21%を買い占められた。このときも主要株主だった朝日は猛反発したが、半年後、購入時と同価格(417億円)で買い戻した。これもあって「既存株主が現状の株式保有状況を維持できるように弾力的で使いやすい制度にすべきだ」と反対表明した。
   テレ東の菅谷定彦社長はライブドア騒動のさい「うちは上場しない新聞社(日経)が33%を永久に持ちつづけると宣言している。狙われる可能性は少ない」と語っているように、日経の保有株が20%以内に押さえつけられることには反対だ。
   今後、総務省は放送法改正に向けて具体的な作業に入るが、朝日、日経などの抵抗で難航が予想される。もっとも、テレ朝にはソフトバンクの孫社長が再び買収に乗り出すという噂は消えないし、テレ東は元衆院議員の糸山英太郎氏が今春から同社株の取得をはじめ発行済み株式の5%を保有、日経に次ぐ第2位の株主となった。朝日、日経ともに平穏ではすみそうにない。