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日興の桑島新社長 お粗末ハラハラ記者会見

   日興コーディアルグループの新社長に就任した桑島正治社長が率いる新体制が先月26日にスタートしたが、今のところ評価は芳しくないようだ。桑島社長の手腕が問われたのが、2006年末の12月28日に東証で初めて行った記者会見。訂正監査報告書の監査依頼を旧中央青山監査法人の後継となる「みすず監査法人」でなく、旧法人から事実上、分裂した「あらた監査法人」に変更した理由について、新聞・テレビの並み居る記者から何度も質問された。時に苛立つように「だから、さっきも言ったように協議がうまくいかなかったということです!」などと、回答にならない発言に終始し、日興幹部をハラハラさせた。

多忙で、想定問答集に目を通す余裕がなかった

東証での日興社長会見は、同社幹部をハラハラさせた
東証での日興社長会見は、同社幹部をハラハラさせた

   日興関係者によると、就任後、初の記者会見に向けて「想定問答集」を用意したが、社長就任が12月26日で、会見が3日後の28日だった桑島社長はあいさつ回りなどに多忙で、想定問答集に目を通す余裕がなかったという。「ぶっつけ本番」の会見で、記者との質疑が噛みあわなかったというのが真相のようだ。

   このハラハラ会見は証券業界や銀行業界にも素早く伝わり、「そもそもシステム出身の桑島さんは外部との接点は少なく、危機管理体制に長けているとは言えない。記者会見の質問にも満足に答えられない社長では、先が思いやられる」と心配する声が漏れるほどだった。だが、その中で唯一、桑島カラーを出したのが、この問題で引責辞任した金子昌資前会長と有村純一前社長ら前経営陣の責任を追及する考えを示したことだ。この点については、マスコミの関心が低いようだが、桑島新体制が前体制の膿をどこまで出せるのか真価が問われる。

   桑島社長は記者会見で、同グループの05年3月期の有価証券報告書の虚偽記載について「前経営陣が利益の計上を意図したか否かを含め、事実解明を徹底的に行う」と述べた。辞任した有村前社長は子会社が組織的に不正を行った事実は認めたが、「利益を多く見せようとする意図はなかった」と否定しており、利益水増しに対する新旧社長の認識の差が浮き彫りになった。

「特別調査委員会に客観的な事実を調べていただきたい」

   桑島社長は虚偽記載が利益水増しを意図的に狙ったものか否かについて「私は関与していないので知らない」と明言。「特別調査委員会に客観的な事実を調べていただきたい」と述べ、弁護士ら有識者で構成する特別委に委ねる考えを示した。調査結果次第では、今回の虚偽記載が担当社員のミスが発端ではなく、前経営陣の指示による利益水増しに発展する可能性がある。
   今回の不正は、当時の監査を担当した旧中央青山監査法人が承知していたとすれば、その責任問題に発展する可能性もある。日興の問題は金融庁や監査法人を巻き込む形で、しばらくは予断を許さない状況が続きそうだ。