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三菱自動車 国内黒字化向け 販売会社を大幅統合

   三菱自動車は懸案である国内事業の黒字化へ向けて、連結対象の販売会社29社を一気に5社に統合する。販売・サービス拠点が少ないトラックメーカーでは国内販社の大幅な集約が進んでいるが、都道府県単位が基本の乗用車メーカーでは例のない思い切った国内対策となる。自動車市場の低迷が予想以上に長引くなか、自動車各社は足元の国内ネットワークをどのように維持すべきか、頭を悩ませている。

再生計画には日本と北米の黒字化が不可欠

「アウトランダー」を投入するなど、商品の魅力で売るラインナップを目指す
「アウトランダー」を投入するなど、商品の魅力で売るラインナップを目指す

   進行中の「三菱自動車再生計画」(05~07年度)では、06年度に純利益80億円、07年度に純利益410億円を必達目標に据えている。やり直しのきかない再生計画を実行し、08年度以降を自立して戦っていくために避けて通れないのが日本と北米の黒字化だ。

   北米では一足早く今年度に営業黒字に転換する可能性が出てきた。販売は月1万台レベルを取り戻し、イリノイ州の生産工場は輸出先の開拓により年産10万台レベルを回復、労働組合との間で人件費抑制にも合意した。06年秋の「アウトランダー」に続き3月に「ランサー」を発売し、安売りでなく商品の魅力で売るラインナップを整えようとしている。

   一方の日本はどうか。生産面では06年、フル操業の水島製作所(岡山県倉敷市)に続き名古屋製作所岡崎工場(愛知県岡崎市)、子会社のパジェロ製造(岐阜県坂祝町)が2交替操業に復帰し、水島だけに人気車種が集中し岡崎とパジェロ製造が過剰能力を持て余す不健全な状態はとりあえず解消した。

   ただ、販売ネットワークから十分に収益があがらない状況は続いている。販売台数は回復傾向にあるものの、国内市場の停滞もあって今年度の30万台乗せは断念。また、「03年に旧ギャラン・カープラザの2系列を統合した際、リストラも拠点再配置も手をつけず重複が多い」(張不二夫常務)とリコール隠し問題で経営危機に直面する間、課題が先送りされてきた観は否めない。

地場資本ディーラーに驚き

   三菱自の場合、831拠点のうち連結販社つまり直営が29社295拠点、地場資本が95社536拠点と地場資本の方が多い。29社を5社に集約する再編策は、まず連結収益にじかに影響する直営販社の収益を改善しようというものだが、この思い切った策が地場資本にも影響を与えるのは間違いない。
   07年度に5社に束ねる直営販社は6,644人いる社員のうち、間接部門の合理化によりセールスやメカニックの直接員の割合を80%に高める。セールス人員は維持する考えだが、保有台数の減少を受けメカニックは生産性との兼ね合いからベテランをルートセールスへ配置転換するなど、減員の可能性があるという。拠点の統廃合も進める考えだ。これらは総人員の削減を視野に入れていることを示している。

   1月12日の発表まで知らされていなかった地場資本ディーラーは驚きを隠せなかった。三菱自の国内営業部門に対する不信感を示す経営者もいる。直営ディーラーに振られた大ナタは地場資本にとって他人事ではない。総市場の縮小に直面しながら収益確保のミッションを突きつけられる国内販売部門の担当者に、販社の面倒を見る余裕を求めるのは酷だ、ということは販社経営者のだれもがよく分かっている。