J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

再生中の三菱自動車 国内販売網崩壊の恐れ

   三菱自動車が再生計画の達成に突き進む一方で、地場資本の販売店が苦況に喘いでいる。新型ミニバン「デリカD:5(ディー・ファイブ)」を2007年1月末に発売し、三菱は勢いに乗ったようにも見える。だがデリカD:5の販売次第では販売店の不満が噴き出し、国内販売網が崩壊する恐れが出てきた。

   三菱は05~07年度の「三菱自動車再生計画」で、06年度の必達目標に「当期利益の黒字化」を掲げた。そこで黒字確保のために国内の販売促進費を大幅にカットした。その影響が新車販売に現れ06年12月には三菱の登録車の新車販売台数が、三菱ふそうのトラック販売台数に負けた。

国内販売店の9割が赤字

「デリカD:5」の売れ行きが販売網の行方を左右する?
「デリカD:5」の売れ行きが販売網の行方を左右する?

   もとは同じ会社だからこそ、三菱の販売店が受けた衝撃は大きかった。06年4~9月期の中間決算では国内販売店の9割が赤字。新車市場で繰り広げられる各メーカー・販売店の激しい販売競争に、三菱の販売店は自力で加われない事情もあった。

   販売促進費カットの効果もあり、三菱は06年10~12月期連結決算で、04年度に四半期決算を開示して以来、初めて営業、経常、当期の全損益項目が黒字となった。再生計画2年目の目標である当期利益の黒字化が現実味を帯びてきた。その一方で、販売促進費が出ないことに地場資本は悲鳴を上げ、メーカー不信が広まった。三菱が地場資本に相談すること無く連結販売店の統合を決めたのも、地場資本が三菱に対して抱く不信感を高めた。

   現在の三菱の国内販売網は、連結対象の29社・295店舗と地場資本の124社・536店舗で構成される。三菱の販売計画達成には地場資本の販売協力が不可欠だ。

   だが再生計画が未達となれば、新車開発の資金を稼げない。加えて業績が上がらなければ、次の飛躍に不可欠なロシア工場建設などの投資構想も消える。三菱は国内に向ける力を減らしてでも利益を確保する必要があった。

2、3月の新車販売の結果に注目

   国内販売陣営の不協和音が響く中で、三菱と販売店の共通目的は利益の確保。この状況下、三菱はデリカD:5を13年ぶりにフルモデルチェンジして発売した。過去には「パジェロ」とともに「4WDの三菱」の称号を確立した名車でもあり、販売価格が261~341万円と三菱車のラインナップでは高額車の部類に入る。
   デリカD:5の月販計画は2,300台だが、パジェロ製造で行う1~3月の生産計画は月産4,000台の計1万2,000台を設定し、販売計画より7割程度多めの台数を販売店に供給できるようにした。通期の決算には2カ月間しか寄与しないが、売れれば販売店は売上高も利益も改善できる。黒字の販売店が大きく増えることはないが、販売店に僅かながらも安堵感が生まれる。

   12月に開始したデリカD:5の発売前購入予約は3,400件と月販計画を超え、拡販への期待は膨らんだ。06年末には「アウトランダー」の特別仕様車も発売し、新型パジェロともに、年度末商戦に利幅の多い4WDの3車種を揃えた。

   「4WDの三菱」の称号復活で、三菱は販売店との信頼を取り戻そうとしている。三菱にとって、この2、3月の新車販売の結果は、これから大きな再編を控えた国内事業の行く末を暗示することになりそうだ。