J-CAST ニュース ビジネス & メディアウォッチ
閉じる

商用車にも世界再編の波 注目は「日野といすゞ」の関係

   日産ディーゼル工業がスウェーデン・ボルボの完全子会社になることが決まった。ボルボは日産ディ株の100%取得を目指して公開買い付け(TOB)を実施しており、3月23日までに決着がつく見通しだ。これで国内の商用車メーカー4社のうち、ダイムラークライスラー系の三菱ふそうトラック・バスと日産ディの2社が完全に外資の傘下に入ることになる。残る日野自動車いすゞ自動車は研究開発分野で手を結ぶ方向にあり、商用車にも世界再編の波が押し寄せている。

アジア戦略を日産ディを活用して加速化

ボルボは日産ディーゼルの子会社化でアジア戦略を加速
ボルボは日産ディーゼルの子会社化でアジア戦略を加速

   これまでは資金的に弱さがあったが解決することになる」「投資のゾーンはいっぱいある」―2月20日に都内で記者会見した日産ディの仲村巌社長はボルボの100%子会社になるメリットを強調した。

   日産自動車のカルロス・ゴーン社長は「99年時点では日産が日産ディを売却しようとすると相手の商用車メーカーから(負債を補うため)支払いを求められた」と振り返る。日産の開発担当役員から転じた仲村社長はキャッシュフロー経営を旗印に債務超過寸前の万年最下位メーカーを建て直した。技術面では思い切った「選択と集中」で尿素SCR(選択還元触媒)という有力な排ガス後処理装置を国内他社に先駆けて実用化した。

   ボルボは06年3月に日産から日産ディ株13%を取得し9月には日産、金融機関から優先株を全株取得。これにより14年には5割弱まで日産ディへの出資比率が高まることが決まっていた。それでも完全子会社化を急いだのは遅れているアジア戦略を日産ディを活用してペースアップしようという狙いからだ。

   辣腕家で知られ米マックや仏ルノートラックを買収したボルボのレイフ・ヨハンソンCEO(最高経営責任者)は「再編においては適切なパートナーを見つけることが大事で、最初の日産ディへの出資はテストだった」と会見で明かした。日産ディのポテンシャルは十分という判断で、予想以上のスピードで実行された完全買収の裏に冷徹な計算があったことを隠さなかった。

ダイムラーは三菱ふそうの将来どう見るか

   国内の商用車メーカーで今後注目されることは2つある。

   ひとつは日野といすゞがどんな共同戦線を張るかだ。バスの合弁会社を共同経営する両社の社長は09年にも施行されるポスト新長期規制という次期排ガス規制を乗り越える技術開発で手を組むことを表明している。おもしろいのは

「紙(契約書)を交わしてということはない。これまでもトップ同士交流しているし」

   (日野・近藤詔治社長)と、形式ばった提携と見られるのを嫌う点。経営統合といった先走った結論には両社とも否定的で、信頼感に基づくじっくりした関係づくりを志向している。もちろん、トヨタ・いすゞ提携という背景はマイナスに働くことはない。

   もうひとつは三菱ふそうの今後だ。06年、販売の挽回が目立った同社だが、1月に大型トラックのハブを04年に続き再リコールしたことは信頼回復に大きなダメージとなった。親会社のダイムラークライスラーが、三菱ふそうの将来をどう見るか。100%子会社だけに、親の判断は大きく今後を左右することになる。