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宅配便戦争「郵政+日通」連合でも、ヤマトと佐川、追撃できず?

   民営化したばかりの日本郵政とペリカン便の日本通運は2007年10月5日、包括的かつ戦略的な提携関係を結ぶことで基本合意した。日本郵政の「ゆうパック」と日通の「ペリカン便」を08年10月にも合弁の新会社を設立して統合、そこで宅配便事業を展開するという。06年度の宅配便の市場シェアは第1位がヤマトホールディングス(36.6%)、第2位が佐川急便(32.4%)、日通は第3位(10.7%)で、ゆうパックは第4位(8.4%)にあたる。3位と4位の提携で上位進出を目論むが、市場が成熟してきているといわれる宅配便事業にあって、果たしてうまくいくのだろうか。

ヤマト、佐川との3強時代が到来

宅配便事業者の競争が加速しそうだ(写真はイメージ)
宅配便事業者の競争が加速しそうだ(写真はイメージ)

   日本郵政と日通が08年10月をめどに設立する新会社は、日本郵政が「ゆうパック」を、日通は「ペリカン便」をそれぞれ移管して発足する。新会社は日本郵政か、日本郵政の傘下にある「日本郵便」の子会社になる予定で、「ゆうパック」が「ペリカン便」を事実上取り込むことになる。新会社の規模や出資比率、またブランドを統一するか、などは今後詰めていく。

   日本郵政と日通は、宅配便事業のほかにも、両社商品の販売や営業面、輸送便の共同化などの推進でも協力関係を強化していくとしている。たとえば、日通は全国に広がる日本郵政グループがもつ物流拠点を活用することで、また日本郵政は日通が配送する荷物を取り込むことで、採算割れといわれる過疎地にかかる配送コストを抑える効果が見込める。資金や人材を効率よく、かつ成長分野に振り向けることができる。

   両社が手を結んだことで、宅配便市場は「クロネコ宅急便」のヤマトHDと、「飛脚便」の佐川急便との「3強」時代に突入。5日の発表を受けて、日通の株価は前日比12円高の641円、ヤマトHDも2円高の1770円だった(佐川急便は未上場)。

市場シェアは「3位+4位」でも上位に遠く届かず

   ヤマトHDと佐川急便を「追撃!」と威勢よくいきたいところだが、「郵政+日通」の前途はそんなに甘くはなさそうだ。08年度のシェアでは第1位のヤマトと2位の佐川急便で70%に迫ろうとしている。「郵政+日通」は3番手だが、シェアで20%に届いていない。たしかに4番手以下との差は広がったが、宅配便市場は成長の鈍化が鮮明になっていて、「各社の勝敗は決着済み」(岡三証券企業調査部の宮本好久氏)と、悲観的に見る向きもある。

   国際物流に目を向けても、競争は激しい。「日通も日本郵政も貨物を取りまとめる機能は優れているものの、商船三井近鉄エクスプレス陣営や日本郵船とヤマトHD陣営とは異なり、自身で海運などの手段を持たないことが、決定的に競争力に欠ける」(宮本氏)という。実際に、日通は海運や航空の利用運送費が利益を圧迫しがちで、コスト管理に苦慮しているもよう。その一方で、9月26日に中国海運グループと合弁会社を設立し、日中間の輸送網の開発に乗り出すことを発表。国際物流での競争力強化に躍起だ。

   かたや日本郵政は、国際物流事業やプラント事業を手がける山九と、公社の時代から組んでいて、「SBY」(SANKYUビジネスゆうパック)を展開してきた。法人限定のサービスだが、国内の集配送も扱っていて、日本郵政は集配送のみを扱い、山九は倉庫での保管等を扱う。山九によると、同社が取り扱う国内「ゆうパック」は年間140万個に上るという。山九との提携は、基本的に国際物流の分野だが、日通とのあいだでやろうとしている国内物流の分野でも一部実施していたことになる。

   山九は「郵政+日通」の業務提携について、「事前の話は特になかった」(郵政・物流提携タスクフォース班)という。ただ、「郵政とは毎週ミーティングの機会を持っていますし、(環境の変化をみれば)このようなことが起こるのは想定の範囲内ですから。今回の提携はペリカン便とゆうパックが国内でシェアを上げる話と考えています。わたしどもは国際物流ですから、いまと変わらずに業務を続けていきます」と淡々と話す。

   山九株は郵政関連銘柄としても注目されていて上昇傾向。5日も10円上がって673円になっていた。