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相次ぐシステムトラブル 東証の危うい体質

   「東証は次世代システムを開発している最中であり、今回のトラブルを機に、開発管理体制について改めて検証し直したい」――。東京証券取引所の斉藤惇社長は2008年2月28日の定例会見の冒頭、こう陳謝した。東証では同8日、システム障害が発生し、株式派生商品の一部で取引ができなくなる事態になった。05年の大規模なシステム障害で非難を浴びた東証だが、いまだに続くトラブルに、投資家からの信頼は揺らいでいる。

プログラムミスが見つかる

東証のシステムトラブルで、投資家からは厳しい目が向けられている
東証のシステムトラブルで、投資家からは厳しい目が向けられている

   今回取引ができなくなったのは、東証株価指数(TOPIX)先物3月決済物。同日午前10時59分から終日、売買停止した。TOPIX先物は将来の価格変動を予測して取引する商品で、3月決済物の取引規模は元本ベースで1日約6800億円に上るという。

   東証は復旧作業を急ぎ、次の営業日となった連休明けの12日は何とか通常通りの取引に戻った。東証の調査によると、システムの中で特定の場合には必要ない過去のデータが消えずに残るというプログラムミスが見つかったという。システム開発会社のチェックが不十分だったことに加え、東証自身も早期の 回復手段を確保していなかったことが原因と結論付けた。

   東証の過去の重大なシステムトラブルは記憶に新しい。05年12月、みずほ証券からの注文データの取り消しができず、複数の証券会社を巻き込む大問題に発展した。当時の東証の鶴島琢夫社長はこの問題で引責辞任し、現会長の西室泰三氏が社長に就任することになった。西室氏は「市場運営者として 一番期待されている信用が危機にひんし、従業員は危機意識に満ちていた」と当時の厳しい状況を語る。

   しかし、そうした教訓が生かされているかは疑問だ。07年12月にも東証にはシステムトラブルが生じ、一部銘柄の取引終了の確認が遅れ、同日のTOPIX終値の算出が通常より約15分間遅くなるという混乱が生じた。

斉藤惇社長や西室会長ら役員4人の月額報酬をカット

   今回のTOPIX先物3月決済物のトラブルで、東証は斉藤惇社長や西室会長ら役員4人の月額報酬を1カ月間、10%減額する処分を決めた。さらに、金融庁に対し、システム管理を強化する再発防止策を提出した。防止策には、全システムの確認テストや検証作業を4月末までに徹底することや、障害時の対応マニュアルを改訂することなどを盛り込み、現在、作業を進めている。

   しかし、東証に向けられた投資家の目は厳しい。「またやったのか、という印象だ」(東京都内の投資家)とあきらめに近い声も少なくない。特に今は、07年夏以降の米国の低所得者向け高金利住宅ローン(サブプライムローン)問題による影響で市場が低迷している微妙な時期だ。取引所のシステム管理が信用できなければ、投資家離れが加速することにもなりかねず、東証は重大な責任を担っていることを再度自覚すべきだ。