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1尾5000円高級ブランド魚 「関サバ」が消えた

   大分市佐賀関で水揚げされる高級ブランド魚「関サバ」の漁獲量が激減している。大分県漁業協同組合佐賀関支店によると、関サバの漁獲量は2007年度(08年3月12日まで)が56トン。06年度と比べて42トン、03年度と比べると184トンも減った。地元・佐賀関では「このままだと幻の魚になってしまう」と危機感を募らせている。東京では1尾5000円超で売られる高級魚。なぜ、こんなにも落ち込んでしまったのか。

高すぎて「地元でも、あまり食べる機会はない」

「成長していないサバまで獲られてしまう」との声もあがっている(写真はイメージ)
「成長していないサバまで獲られてしまう」との声もあがっている(写真はイメージ)

   「関サバ」ブランドを名乗るには「条件」がある。まず、大分県漁協佐賀関支店に所属する組合員(漁師)が伝統の1本釣りで釣りあげたこと。もうひとつは、平均的な大きさである700グラム超が必要なこと。釣り上げた漁師が佐賀関支店と取引する5社の仲卸業者を通して出荷されるサバだけが、「関サバ」というわけだ。1本釣り漁法なので、魚を傷つけることなく獲れることや、豊後水道の流れの激しい瀬にすむことから身が引き締まり、脂がのっておいしいという。

   漁獲量は、07年度で56トン。ここ数年で豊漁だった03年の241トン以降は年々減り続け、いまや希少価値になってきた。

   大分県漁協佐賀関支店の上野孝幸支店長は、「小売価格では1キロ5000円程度になっています」という。関サバの多くは東京方面に出荷していて、「地元でも、あまり食べる機会はない」(大分市職員)。なにしろ高値で口にできないそうだ。

関サバの減少は巻き網漁による乱獲のせい?

   「関サバの漁獲量の減少は、巻き網漁による乱獲のせいだ」。佐賀関支店の上野支店長はそう主張する。巻き網漁の漁師たちは、同じ大分県漁協に所属する組合員ではあるが、津久見支店、臼杵支店など佐賀関以外の漁師。巻き網漁が違法なわけではないが、佐賀関の漁師らは「産卵前や、まだ成長していないサバまで獲っていってしまう」と嘆く。

   津久見地区など巻き網の漁師が佐賀関に進出してきたのは、3~4年ほど前から。かつては津久見沖周辺でも相応の漁獲量が確保できていたが、この海域の汚れが進み、魚の獲れる佐賀関周辺の漁場をめざした。漁獲量が急速に減ってきたのがここ3、4年なので、数字のうえでは一致する。また、巻き網漁にはいろいろな魚がかかるが、希少価値とブランド効果もあって単価が高いサバを狙って進出していることが拍車をかけたとみられる。

   もちろん、巻き網漁で獲られたサバは「関サバ」にはならないが、「市場に出ると佐賀関で獲れたというだけで、他県で獲れたサバより高値で取引されるし、スーパーや料理店などでは関サバといって売られている」のが現実だ。

   「関サバ」の減少に歯止めをかけようと、佐賀関の1本釣り漁師らは、サバの育成水域になっている「高島水域」での操業を、お互い停止することを提案しているが、この話し合いもうまくいっていない。成魚しか獲れないように、巻き網の網の目の大きさを規制する案もあるが、大分市は「漁獲量が減ったことについて科学的な証明が得られないことには規制しようがない」(農政部)という。これに最近は地球温暖化の影響なども指摘されていて、大分県が現在進めている調査結果を待つしかない状況になっている。

   「(津久見や臼杵の漁師も)生活があるので、進出するなというわけにもいかない」と大分市職員はいうが、佐賀関の漁師たちは居ても立ってもいられないようだ。