ワークスタイルの変革で「環境負荷」が減る
グリーンITの現在と未来 東大・江崎浩教授、日立・竹村哲夫氏対談

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   洞爺湖サミットが近づき、一段と「環境」問題に注目が集まっているが、IT業界でも「グリーンIT」というキーワードが盛んに飛び交っている。一般的には、IT機器やデータセンターの省電力化という分野での取り組みとされているが、ASPやSaaSといった、Webの世界で耳にする技術もグリーンITに貢献している。さらには、その目線は都市デザインにまで及ぶ「地球規模」の壮大なビジョンであることを知る人は、まだまだ少ない。

   そこで、東大で「グリーン東大工学部プロジェクト」を推進する江崎浩同大教授と、グリーンITを積極的に推進する日本ベンダーの1つである日立製作所の竹村哲夫同社理事のお二人から、「産」「学」それぞれの立場から「グリーンIT」の現状と課題、未来への展望について聞いた。

「環境経営」が大学では進んでいない

日立・竹村哲夫氏
日立・竹村哲夫氏

――ひとくちにグリーンITと言いますが、どこまでやれば「グリーン」なのでしょうか?

竹村   ICT(情報・通信)産業がグリーンITに対して担う役割には、3つの分野があります。

   まず1つ目は、省エネ効果の高い機器を提供すること。これはベンダー本来の業務ですから、非常に分かりやすい取り組みです。

   2つ目が、エコシステム全体の省エネに寄与する技術を、ICTで実現すること。たとえば、オフィス以外の場所で働くテレワークのようなワークスタイルの変革や、RFIDによる物流の改革、さらにはITS(Intelligent Transport System)による渋滞緩和といった分野までが含まれます。テクノロジーによって、利便性の向上を目指しつつ、CO2の排出量削減の面で効果を得るということですね。

   3つ目は、地球環境そのものをモニタリングする仕組み作りです。電力消費やCO2排出の状況を地球規模でモニタリングし、危機管理や効果測定に役立てる技術を提供していく分野になります。

   日立ではそれぞれの分野で取り組んでいますが、当然1つのベンダーだけでなしえる話ではありません。たとえば物流などは多様な業界が絡む部分ですので、協力しながら進めていく必要があります。もちろん「産」だけでなく、「学」「官」とも協調して進めていくべきでしょう。
江崎   我々はその「学」になるわけですが、3つ目の「モニタリング」の分野では、気象センサを持ち寄って地球環境をモニタリングしようというプロジェクトを3年ほど実施しています。まずはモニタリングした情報をオンラインに載せるところからはじめ、最終的にはこの情報を基にしたワークスタイルの変革という展開を目指すものです。

   その1つの手法が、企業、団体の施設や環境を総合的に企画・管理・活用するファシリティネットワークマネジメントです。実際にチャレンジしてみると、私たち「学」の分野がまったく進んでいないことに気づきました。同時に「官」も非常に遅れている。

   企業は経営者がポートフォリオで判断しているため、エネルギーについてもきちんとチェックする体制が整っています。しかし「学」や「官」では、そういった部分を見る人がいないという問題があるんですね。

   この問題に対し、採算を度外視してとにかくはじめてしまえ、という考え方は非常に危険です。ROI(投資収益率)を提示した上で、投資に対するリターンを判断するための仕組みの部分から作らないといけません。そこは「産学官」が一体となって推進していく必要があると思います。

省エネ化をライフサイクルで算出する基準づくりが必要

東大・江崎浩教授
東大・江崎浩教授

――東大のプロジェクトと言うのはどういう内容ですか?

江崎   今我々が手がけているのは、東大工学部の2号館を実験場としたプロジェクトです。このプロジェクトは、産学連携の共同研究開発コンソーシアムを組織して、センサーネットワークと制御ネットワークを統合した、先進的なファシリティマネージメントシステムを構築していくというものです。

   実はこれまでに、建物の省エネ化を、使用前・使用後できちんと計測したデータはありませんでした。そこで、このプロジェクトでは半年間をデータの蓄積に集中し、その後のフェーズで省エネ化した効果をデータとして取得する計画です。投資した額も明らかにした上でROIを出し、東大全体や地方自治体へ展開する際の指標にしていきたいと考えています。
竹村   最終的に製品を利用する現場でのエネルギーの省力化は、もちろん重要だと思います。しかしベンダーの立場から見ると、どこからどこまでのエネルギー量を対象とするかが、より大きな問題です。

   たとえば電力消費は非常に小さい製品があったとしても、製造の段階で膨大なエネルギーを消費していたら、トータルではCO2削減に貢献しません。また利用後の廃棄やリサイクルにかかるエネルギーも、必要な観点です。

   つまり温暖化ガス排出量をライフサイクルで考えて、数値化していくことが重要なのです。

   当社も含め、各ベンダーはこうした数値を発表していますが、今のところ算出方法の基準はありません。そのために、明確に比較ができないという問題があります。これについても「産学官」が一体となって基準作りを推し進めていくべきではないでしょうか。基準が浸透し、評価指標になることで、市場に競争原理が働くようになります。早い段階で、このサイクルが周りはじめるところまで進めていかないといけません。

SaaSや仮想化技術もグリーンITに貢献

――機器や施設によるエネルギーの消費軽減という観点以外では、どういう取り組みがありますか?

江崎   実は東京大学というのは、東京都の中でもっとも電力を消費している施設だそうです。エネルギーの「消費」面では省エネ化を考えるべきでしょう。一方でエネルギーの「供給」を考えた場合、もしかすると構内に発電所を置くことが効率的なのかもしれません。同様のことが「産」の分野ではファクトリーオートメーション(生産の自動化)の視点から議論されていることと思いますがいかがでしょうか。
竹村   もちろん議論を行っていますが、それ以上にチャレンジしているのがワークスタイルの変革です。人の活動そのものを変えて行くことで、結果として現場のデザインや使用するエネルギーも変わります。

   その一例として、日立では、社員が使うコンピュータに最低限の機能しか持たせない「シンクライアント」化を急速に進めています。これは個人情報保護に代表されるセキュリティ面の発想が起点なのですが、書類やデータをデータセンターに集約することで、社員が自分専用の机を持たない「フリーアドレス化」とサテライトオフィス化が実現しました。結果として、フロアスペースが33%削減でき、逆にお客様への対応時間は30%増加したという成果が出ました。

   これは書類やデータを集約することによって、ワークシェア(労働時間短縮)やファイルシェアを積極的にやらざるを得なくなったことが大きな要因だと考えられます。提案書や見積りの作成も共同作業によって半分以下の時間で行えるようになりました。もちろん、作業時間の削減はエネルギーの削減に直結します。

   今のところグリーンITにどの程度貢献するかと言う標準的な指標はないのですが、定量的に評価する環境ができてくると、ワークスタイルの変化が環境に与える影響を判断できるようになると思います。
江崎   データの集約がワークスタイルを変化させ、エネルギー消費を抑えるというのは非常に興味深いですね。その意味では、ソフトウェアの機能をユーザーがネットワーク経由で活用するSaaSや仮想化も同様の効果をもたらすかもしれません。たとえば100台あったサーバが10台に集約するなど、データセンターに集約した資源を仮想化してできるだけ共有していくという考え方は、グリーンITとSaaSが同じ目的を持って進歩していく推進剤になるのではないでしょうか。

   さらに言えば、ワークスタイルの変革で人の活動が変わる、というお話がありましたが、エコシステムを考える場合、「環境デザイン」という視点も非常に重要です。農業や物流を中心にデザインされた都市が、ITの利用が進んだ現在から将来にかけても通用するのかは疑問です。エネルギーの供給と消費は、人の活動そのものに影響されます。コンピュータを誰がどのように利用しているか、という情報を得ることができれば、よりよい都市空間のデザインを行える可能性がでてくる。グリーンITは、そこまでを視野に入れて取り組むべきだと思います。

Interopも今年はグリーンITがメインテーマ

――ネットワークイベント「Interop Tokyo」でも、今年はグリーンITを取り上げるそうですね。

江崎   私はInteropのコンファレンス・プログラム委員会の議長を務めていますが、今年のInteropは展示会、コンファレンス共にグリーンITが大きなテーマとなっています。

   コンファレンスでは、竹村さんとシムックスの中島さん、さらに経済産業省の星野さんをお招きして、グリーンITについて文字通り「産学官」で議論します。

   また、展示の方でも、東大工学部2号館のプロジェクトを紹介します。
竹村   日立では「CoolCenter50」という、データセンターの消費電力を半分にしていくというプロジェクトを紹介します。データセンターでは、IT機器だけではなくて空調やUPS(無停電電源装置)など様々な機器が存在します。これまではIT機器以外の部分も含めた設備をトータルで捉えて、フィードバックをかけながら最適化していく手法です。また、先ほどお話したワークスタイルの変革についてもご紹介したいと考えています。
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