2024年 4月 23日 (火)

「もったいない」を「ありがとう」に フードバンク運動日本で広がる

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   食べられる食品は捨てずに生かす。「当たり前」と思えるフードバンクと呼ばれる活動が改めて注目されている。これまで東京や兵庫のNPO法人が行ってきた活動は、2007年から08年にかけて沖縄、広島などにも広まり、いま名古屋や北海道でもフードバンク設立の準備が始まっている。

   まだ食べられるのに「完璧でない」「市場性がない」からと捨てられていた食品を食品会社などから寄付してもらい、それがあれば助かる、という人たちに無償で届ける。もちろん、賞味期限が切れていない、安全に食べられる食品である。企業の社会貢献の新しい形としても、今後ますます関心を集めそうだ。

350トンの食料引き取り、約60の施設に配る

寄付された食品を仕分けするボランティアたち(東京・浅草橋のセカンドハーベスト・ジャパンで)
寄付された食品を仕分けするボランティアたち(東京・浅草橋のセカンドハーベスト・ジャパンで)

   フードバンクは米国で生まれ、40年以上の歴史がある。日本での草分けは、東京・浅草橋の「セカンドハーベスト・ジャパン」だ。2002年、今も理事長を務めるアメリカ人、チャールズ・マクジルトンさんがつくった。

   元軍人で宣教師、東京・山谷で野宿者問題とかかわり、自ら隅田川沿いでブルーシート暮らしも体験した、というユニークな経歴の持ち主だ。最初の年に配った食料はわずか30トンだったが、07年度は350トンもの食料を企業から引き取り、約60の福祉施設・団体に再分配したという。今年はそれを上回る勢いで、マクジルトンさんはじめ6人のスタッフが日々食品の配達などに追われている。協力してくれる企業も40社を超えた。

   倉庫には、さまざまな食品が並んでいる。賞味期限がまだ数週間先、ものによっては来年、再来年まで日持ちのする食品もある。梱包する外箱が少しへこんでしまった冷凍食品。ラベルが汚れた、印字がずれてしまった、という「傷物」の缶詰。「季節限定」を過ぎてしまったお菓子。どれも中身には問題がないのに、企業がわざわざ廃棄コストをかけて捨てていたものだ。英語にはない「もったいない」という言葉が、マクジルトンさんの口をつく。その「もったいない」を「ありがとう」に変えるのがフードバンクだ。

   食品を受け取るのは児童養護施設や女性シェルター、野宿者、難民支援団体など多岐にわたる。「わずかでも食費を浮かすことができ、その分、赤ちゃんのオムツやミルク代にあてられる」「好きなだけ食べていいよ、と初めて言われた」「育ち盛りの子どもたちをかかえ、食べ物はいくらあってもありがたい」といった声がマクジルトンさんのもとに届く。日本で難民認定を申請中で、ギリギリの生活を余儀なくされている人々にとっては、フードバンクから届く食べ物が文字通り命綱になっているそうだ。

本家米国ではサブプライム不況から利用者が増加

   本家・米国では200を超えるフードバンクがあり、その規模、影響力は日本とは比べ物にならないほど大きい。その米国では08年、サブプライム問題やガソリン・食品の値上げなどで、フードバンクを頼る人がかつてないほど増えているという。シカゴにあるフードバンクによると「去年6月から今年6月までの間にフードバンクを利用する人が前年同期より20パーセントも増えた」。家賃や光熱費、医療費などを払うと食費が払えない、という人がフードバンクに助けを求めているのだ。格差が広がり、ワーキングプアが増加している日本でも、よそごとではないだろう。

   東京の「セカンドハーベスト・ジャパン」、兵庫の「フードバンク関西」に続き、最近、沖縄、広島でもフードバンク活動が始まった。沖縄の「フードバンク沖縄」は07年の秋、2人の子供をもつ主婦の奥平智子さんが独力で立ち上げた。「何よりも『もったいない』という気持ちから動き出しました」と奥平さん。同団体のブログのトップページには「人も食べ物も企業も救うことができる新しい『食のリサイクル』」」とある。共感する人たちの輪は少しずつ、着実に広がっている。

   食料自給率が40パーセントしかない日本に、「もったいない」食品はあふれている。それを生かすのか、無駄にするのか。「大量消費・大量廃棄」社会のあだ花とも言えるフードバンクが、投げかける問いだ。

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