テクモがスク・エニ袖にした 理由は「昔の怨恨」?

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   ゲームソフトメーカー老舗のテクモがパートナーに選んだのは、国内ソフトメーカー最大手のスクウェア・エニックスではなく、業界9位のコーエーだった。ゲーム業界は2003年から企業の統合・合併による再編が始まり、企業の巨大化が進められてきた。開発費の高騰に耐えるための体力強化と、世界戦略を加速させるためだったが、その流れに反するような、「弱小連合」とも囁かれる合併はなぜ行われたのか。

「古い付き合いがある『両家』の話し合いのもと、統合決定」

   テクモは1967年設立のゲームソフトメーカーの老舗。「DEAD OR ALIVE」「NINJA GAIDEN」などの世界的に人気の高い格闘アクションゲームシリーズで知られる。そんなテクモが08年8月29日、「ドラクエ」「ファイナルファンタジー」シリーズなどの大ヒットソフトを出しているスクウェア・エニックスから、友好的TOB(公開買付け)を仕掛けられた。買い付け価格は当時の株価に30%のプレミアムを付けた920円。08年9月4日までを期限とし、賛同が得られない場合はTOBを撤回する、というものだった。

   スク・エニによると、テクモと株の買収交渉を始めたのは08年5月から。この頃のテクモは、社員から給与未払い問題で提訴され、社員の大量退社の噂が流れるなど内部でゴタゴタ続き。08年6月の中間決算では純利益が前年同期比で52%減になった。ゲームソフトは好調だったがパチンコ・パチスロ向け液晶ソフトの受託開発で発売延期の影響が出たためだった。スク・エニはJ-CASTニュースの取材に対し、TOBの狙いをこう説明する。

「テクモは海外向けソフトの優秀なクリエイターを多く抱えている。そんなゲーム業界の財産の人材がテクモを去りそうだと知り、なんとか彼らが退社を踏みとどまれるよう支援できないか考えた」

   スク・エニはこの頃からテクモの幹部社員などとも接触していた。TOBに賛成する社員も相当数出たのだが、テクモは08年9月4日、突然、スク・エニのTOBを断り、ゲームメーカーのコーエーとの統合を発表する。コーエーもゲームソフトメーカーの老舗で、「信長の野望」「三國志」「真・三國無双」などのヒットシリーズを連発させている。

   コーエーはJ-CASTニュースに対し、

「テクモに経営統合を持ち掛けたのは、スク・エニがTOBを発表した直後。当社の創業者とテクモの創業者は古い付き合いがあり、『両家』の話し合いのもと、統合が決定されました」

と打ち明ける。テクモはそれまで、スク・エニのTOBを受けるかどうかを検討していたわけだが、コーエーの誘いに気持ちが一変したわけだ。

   テクモの柿原康晴会長兼社長は、統合発表後、

「スク・エニの提案は開示資料以上の具体的な内容がなかった。大株主である私の家族とも検討したが、スク・エニの提案には反対だった。従業員の中にはスク・エニの提案を受け入れるよう求める意見もあったが、何をもってスク・エニの方が良いのか判断できなかった」(日本経済新聞08年9月5日付け)

と話している。

「あんなところの傘下に」と今でも思っている?

   袖にされたスク・エニはJ-CASTニュースに対し、

「なぜTOBを断わるのか理解できない。コーエーとの統合の条件が、当社よりもテクモの株主にとって有利なものなのか、などの公開質問状を出しているが、返事はまだ来ていない」

と話している。

   テクモはゲームソフトで業界23位。コーエーは9位だ。業界再編が続き、企業は統合・合併で巨大化する方向にあるのに、なぜ「弱小連合」などと囁かれる統合を決めたのだろうか。ゲーム業界に詳しいジャーナリストは、「老舗メーカーだからこそ、後発のスク・エニの傘下になるのを嫌ったのではないか」と話す。

「思い当たる出来事といえば、スクウェアの時代に、大量の開発者を高給でライバルメーカーから引き抜いた。『ゲームを作る社員が底をついた』と嘆くメーカーも出たほど。老舗メーカーは開発者を一から育てて来たわけで、それをごっそり奪われ、経営者達は相当根に持っていた。テクモもコーエーも被害者意識を持っています。『あんなところの傘下に・・・』と、今でも思っている経営者がいるのは間違いないと思いますよ」
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