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渡瀬恒彦も体験の振り込め詐欺 「携帯番号換え」など手口は進化

   振り込め詐欺がますます巧みになり、その横行に歯止めがかからない。俳優の渡瀬恒彦さんもテレビ番組でその体験を話し、知っていても引っかかってしまう怖さを告白した。実際、親に子どもの携帯番号が換わったことを伝え、後でその番号に連絡させるなど、手口は進化している。

「号泣しているので息子の声か分からない」

   振り込め詐欺には、オレオレ詐欺や還付金詐欺などがある。オレオレはもっとも古典的だが、それでも引っかかる被害者が絶えない。

   俳優の渡瀬恒彦さん(64)も、被害者ではないが、体験者の一人だ。テレビ朝日系で2008年10月16日放送の「徹子の部屋」。そこで披露した体験談は、被害に遭わない難しさを考えさせた。

   詐欺の電話では、息子を思わせる男の子が「大変なことやっちゃったあ」と泣き始めた。次に、弁護士のような人に代わり、交通事故があり、息子が車を運転して妊娠8か月の女性をはね、胎児が亡くなったと伝えた。示談の前にお金がいるという話になったが、横断歩道で後ろからはねた、豪雨で振り込みが遅れるのはダメ、という点に疑問を持ち、危うく難を逃れたという。

   とはいえ、「号泣しているので、息子の声なのかよく分からないんですね。成人してから号泣を見たこともないんですよ」と渡瀬さん。自分は引っかからないと思っていたが、「あれ引っかかりますね」と振り返った。司会の黒柳徹子さんも、「刑事さんを演じている人でも、だまされそうになるんですからね」と驚いていた。

   巧みに人を操る振り込め詐欺は、ますます進化している。音声検知による詐欺防止対策システムを導入した愛媛銀行では、営業統括部の担当者が、仰天するようなその手口を明かす。

   まず、オレオレ詐欺。いきなり親に電話して「痴漢で捕まった」などとして振り込ませる手口はよく知られるようになり、引っかかる人は少なくなった。そこで、先に振り込みのことを言わない新手の詐欺が出てきたというのだ。

「お客さまの番号は」などと言って振り込ませる

   新手では、なにげなく息子などを装って電話をかけてくる。そして、「お父さん、携帯電話を買い替えたので、電話番号を換えて!」などと伝えてくるのだ。そのときは、状況を探りながら、世間話をするだけで終わる。

   本番は、その3日後などだ。「実はお父さん、この間は言えなかったんだけど、横領がばれてしまって…。何とかならないかと」。同じ声であり、かけ直しても同じ番号なので、つい信じてしまう。愛媛銀行の担当者は、「警察は、被害に遭わないためにも本人確認しましょうと呼びかけています。しかし、この場合は、確認しても確認の意味がないんですね」と嘆く。

   次に、還付金詐欺も実に巧妙だ。

   電話では、社会保険事務所などを名乗り、「期限の8月31日までに還付金の手続きをしていらっしゃいませんね。実は、本日中なら手続きができます」などと誘う。被害者の「もらい損ねた」という金銭感覚に訴えるわけだ。

   さらに、誘導方法も抜け目ない。携帯電話で指示されるままに、ATMで「還付金手続き」をするわけだが、そのときに「お客さまの番号は、524369です」とだまし、52万4369円を振り込ませるのだ。これで、振り込み機会が少なく操作に慣れていない人なら、40~50代でも引っかかってしまうという。

   「振り込まないように呼びかけても、本人には『振り込んだ』という認識がないんですね。1か月後に、『お前んとこで引き出しただろう』という苦情が来たり、窓口に振り込みの明細を見せて『もらいました』と喜ぶ人がいたりします。詐欺と分かると、みなさん驚かれるんですよ」(愛媛銀行担当者)

   その対策のために、愛媛銀行が08年10月15日から導入したのが、ATMでの携帯電話の声から詐欺を突き止める富士ソフトのシステムだ。逆に、巧みな詐欺を支えるマニュアルの存在から会話パターンをパソコンで分析し、監視センターからのスピーカーでATMの客に注意を呼びかけるものだ。

   ただ、オレオレ詐欺のうち、被害者の3割が銀行職員から忠告や制止があったにもかかわらず、ATMや窓口で現金を振り込んでいることが、警視庁が10月12日までにまとめた調査で分かっている。こうした場合に、被害者をどのように説得できるかも、今後の課題になりそうだ。