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神奈川県「裏基準」高校入試 県教委に「学校擁護」意見が殺到

   神奈川県の県立高校の入試で、本来ならば合格圏内の受験生を、服装の乱れなどの「裏基準」で不合格にしていたとして、学校側が謝罪し、校長は事実上更迭されることになった。「学ぶ機会を奪った」として学校側を非難する声もある一方で、教育委員会などに寄せられた声や、ラジオやネットのアンケートでも、学校側を擁護する声が圧倒的だ。この「裏基準」そんなに悪いものなのか。

「真面目な生徒を」という学校の苦しい胸の内

   「裏基準」が明らかになったのは、神奈川県平塚市にある県立神田高校(生徒数347人)。神奈川県の県立高校の入試では、(1)学力調査(2)面接'(3)調査書を点数化し、上位から合格を決めていくが、合格点に達していても、評価基準として公表されていない「裏基準」で22人が不合格になっていたのだという。

   この「裏基準」によるチェックは、05、06、08年度入試で行われていたといい、その内容は「軍手をつけたままで願書提出時の受け渡しをした」「服装がだらしない」「化粧をしている」といったもの。

   「裏基準」は08年7月に内部通報で発覚、県の教育委員会が08年9月末まで調査を続けてきた。10月28日には、同校の渕野辰雄校長が会見し、「選考基準から逸脱しており、大変申し訳ない」と謝罪した。その一方で、渕野校長は、同校からは退学者が年間100人以上出ているという状況を明かした上で

「大人への不信感を持つ子が多く、生徒指導に苦慮していた。教諭の負担を軽減したかった」
「真面目な生徒を多く取り(入学させ)たかった」

と、苦しい胸の内を語った。確かに、情報サイト「All About」などで紹介されている複数の入学難易度ランキングを見比べてみると、いずれのランキングでも、同校は「底辺」に近い位置にあるというのが現状で、生徒指導面では相当な困難があることが推察される。

   こんな状況に対して、ネット上や放送局、教育委員会に寄せられた声の多くが、学校側の声を支持するものなのだ。例えば、ライブドアが同社のポータルサイトで「服装、態度で不合格にしてもよい?」というアンケートを実施したところ、10月30日17時現在で5万4000件以上の声が寄せられ、「不合格にしてもよい」と回答したのは、全体の93.9%。

「勉強をしたい、授業を受けたいならそれなりの態度や服装をすべき」
「舐めた態度で受験に臨むなという事」

といった声が圧倒的だ。

ラジオでも学校「支持」が圧倒的

   TBSラジオの報道番組「アクセス」が10月29日夜に行った

「あなたは、公立高校の入試の合否判断に身なりを加えていいと思いますか?」

というアンケートでも、

   「身なりも加えていい」と回答したのが456人に対して、「そうは思わない」は129人。「推薦入試ならばいいが、一般入試ならばいけない」といった、それ以外の答えも65人。やはり、学校側の対応を支持する傾向も目立つ。

   今回の問題の当事者とも言える、神奈川県教育委員会にも意見が殺到している。10月29日17時までに、メール70件、電話50件が寄せられたのだという。中には「子どもが学ぶ機会を奪ったのは間違い」などと学校側を批判するものもあったというが、割合としては全体の1割未満。残り9割が、「態度や服装の乱れで不合格になるのは当然」「校長が記者会見で謝罪するのはおかしい」といった「同情論」だった。

   それでも、やはり県教委としては「『裏基準』は不適切」との立場で、同日には渕野校長を11月1日付けで総合教育センター専任主幹に異動させる人事を発表した。事実上の更迭だ。

   県教委には10月30日になっても意見が相次いで寄せられているというが、「まだ件数や内容などは集計できていない」と話している。一方、ネット上では、校長に同情的な声が増えつつあるようだ。