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不振テレ朝の広告営業戦略 代理店からリクルートにシフト?

   テレビ朝日は、業務提携したリクルートの営業力で広告を取る戦略を検討していることが分かった。広告収入激減からの苦肉の策で、広告代理店からのシフトが進む可能性が出てきた。さらに、朝日新聞やKDDIと組んで、ケータイなどの有料コンテンツからの収益も検討している。

リクルートの「セールス力」に期待

リクルートと提携したテレビ朝日
リクルートと提携したテレビ朝日

   テレビ朝日とリクルートが2008年12月10日に資本・業務提携を発表したニュースリリースに、分かりにくい表現がある。それは、リクルートが持つ「セールス力」を活用して、テレビ番組やネット上などで各種サービスを開発・提供していくというものだ。セールス力が何の役に立つのか。

「クライアントに広告を取る営業をして、提携企画に乗っていただくということです。テレビには広告代理店が入っていますが、うちも利用できれば、という意味ですね」

   リクルートの広報担当者は、こう明かす。つまり、テレビ局のCM獲得の手段として、広告代理店からリクルートにシフトしていくということだ。

   両社によると、サービスとしては、テレビ主体なら、服や店などのデータ放送を流し、「ホットペッパー」などのサイトにリンクして、注文・予約ができるようなものが考えられる。また、ネット上なら、テレビ番組を動画にして、「じゃらん」などのサイト上で見られるようにすることも検討中だという。

   リクルートの売り上げは、広告が大部分を占める。07年度は、5065億円にも達した。ただ、テレビや新聞と違って、広告代理店に頼らず、独自に顧客を開拓している。同社が広告を取るのは、レストランや結婚式場など中小企業が多い。テレビCMで流れるような大企業は、比較的少ない。しかし、テレビも入ることで、大企業からも広告を取るようにしたいということのようだ。

   テレビ朝日の経営戦略室では、「リクルートの協力を得て広告を取るようになるかもしれません」とだけ話している。

ネットユーザーからの収入にも期待

   リクルートとの提携では、テレビ朝日は、「広告外の収入にも期待している」と明かす。実際、広告収入激減の中にあって、映画やDVDなどによる稼ぎのウェートが大きくなっている。ネットなどへ進出すれば広告外収入も考えられ、経営戦略室では、「ユーザーからも収入を得るようになるかもしれません」と言う。

   さらに、ケータイなら、キャリアとの提携は欠かせない。テレビ朝日は、同様に広告減に悩む親会社の朝日新聞社とともに、auブランドのKDDIと業務提携交渉に入っている。2008年12月中にも業務提携が決まる可能性もある。

   KDDIの広報部によると、ケータイでは、新聞・放送のニュースや動画といったコンテンツの有料配信などを検討している。テレビ朝日から見れば、リクルートやKDDIを通じて、ユーザーからの収入の道も開かれるわけだ。リクルートは、ケータイ・パソコンの媒体における売り上げが35%にも達しており、ネット上におけるその「メディア開発力」の活用も見込んでいる。

   ただ、テレビを見ても、ネット上でのサービス利用の見通しは立たないままだ。リクルートでは、フジテレビ、TBS、日本テレビともすでに、テレ朝と同様な業務提携を結んでいる。しかし、テレビ主体の事業でさえ進んでいない。

「ワンセグ機能のある携帯電話端末は普及していますが、ワンセグの番組を見る人は思いのほか少ないようです。ですから、データ放送まで見るまでには至っていません。なかなかうまくいかず、まだトライアル中です」

と、リクルートの担当者は漏らす。これで、コンテンツ有料化や広告増による収入が見込める、というにはほど遠いようだ。