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トヨタ新社長に豊田章男氏 「大政奉還」スクープは本当か

   トヨタ自動車が通期で初めての赤字に転落するとの見通しが明らかになったのに関連して、同社のトップ人事が注目され始めた。朝日新聞などが「09年春にも、社長が創業家の豊田章男氏(52)に交代する人事が固まった」とも報じられている。ところが、日経、毎日、読売、中日など人事については何も触れない有力紙も多く、見方が分かれているのだ。

12月中旬以降に人事が固まる?

   トヨタは2008年12月22日、09年3月期の連結業績見通しを発表し、営業利益が1500億円の赤字に転落することが明らかになった。同社が通期で赤字に転落するのは、連結決算の開示を始めて以来初めてという異常事態だ。同社は、世界各地で減産を進めていく考えで、国内では12月24日から2日間、高級車「レクサス」の生産拠点でもある、田原工場(愛知県田原市)の一部と、子会社・トヨタ自動車九州の宮田工場(福岡県宮若市)の生産を休止するなどの対応を進めている。

   そんな中、相次いで「次の人事」が報じられているのだ。次期社長として名前が挙がっているのが、創業家の豊田章男副社長(52)。章男氏は、トヨタの実質的な創業者である故・豊田喜一郎の孫にあたり、豊田章一郎名誉会長(83)の長男。仮に社長昇格が事実だとすれば、創業家出身者が社長を務めるのは約14年ぶりだ。

   一番早い段階で「昇格説」を唱えたのが朝日新聞で、12月23日朝刊の1面に、連結赤字と並列する形で「社長交代 豊田章男氏に」という見出しを打ち、2面の特集記事では、今回の人事が固まったのは12月中旬以降だったとした上で、

「創業家の求心力に賭けて『大政奉還』が固まった」

などと背景を解説した。

   産経新聞も、朝日新聞ほど断定的ではないが、同日紙面の3面に

「トヨタ 高まる創業家への期待 来年6月、章男副社長にバトン?」

との観測記事を掲載、

   「創業家の求心力への期待も高まっており、渡辺社長が就任丸4年となる来年6月の交代の可能性が出てきた」

などと報じている。

日経、毎日、読売は社長人事については触れず

   両紙に引き続いて、共同通信が「豊田章男副社長(52)が昇格する社長交代が濃厚となった」、時事通信が「豊田章男副社長(52)を来年春にも社長に昇格させる方向で調整している」などと後を追った。

   一方、日経、毎日、読売、中日の各紙は、トヨタの営業赤字については大きく報じながらも、社長人事については触れておらず、大手紙の中でも対応が大きく分かれた。

   この背景として、業界関係者からは「有力候補の一人であることは間違いないが、まだ『章男氏で確定』とまで言い切れないからなのではないか」との声も聞こえてくる。つまり、もう一人一族以外の人物を間にはさんでもいいのでは、という考えだ。章男氏は03年6月、トヨタとしては最年少で専務に就任し、05年には副社長に就任。この副社長という立場は、海外と国内の販売を統括する役割にあるが、今回の赤字は、この2つの「不調部門」が生み出したものと言っても過言ではない。そこで、「手腕に対して疑問の声もあがりかねない」ということのようだ。以前から章男氏の社長昇格説はくすぶっており、「社長昇格か」という観測は以前に何度も報道されている。ただ、トヨタ内部にも異論があり、「先送り」の形になっている。

   トヨタ自動車広報部では、

「まだ何も決まっていない、としか申し上げようがありません」

と話すにとどまっているが、今後も様々な憶測を呼びそうだ。