2024年 4月 24日 (水)

見知らぬ人すべて「不審者」扱い これじゃ誰も子ども助けない
教育評論家の尾木直樹さんに聞く

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あいさつで心を通わせることが大事

――自治体は、子どもたちを守ろうと、地域での声かけを励行しています。しかし、見知らぬ人が声をかけても不審者に見られるだけでは?

尾木 九州のある地域では、PTAがあいさつ運動にとても熱心で、「1日10人以上声かけ運動」というのもありました。あいさつタイムや、あいさつストリートがあったり、あいさつカレンダーさえPTAで配られたりします。でも、PTA会長が交流活動で隣の小学校を訪ねて子どもたちに声をかけたとき、「知らないおじさんだ」とみな逃げてしまいました。運動だと形式ばかりで、実にばかばかしいと思うんです。僕は、あまりこういうのが好きでないんですね。

――では、どうしたらいいですか?

尾木 形だけ機械的に、「おはよう」と言えばいいのではありません。あいさつは大事ですが、対症療法で地域は作れないんですよ。「元気ないね、つらいことでもあったの?」「お母さんから怒られたのか」こんなふうに、心を通わせることが大事なんです。あいさつは、心と心のキャッチボールのきっかけに過ぎない。大声でのあいさつを自慢する学校も多いですが、気持ち悪いだけでおかしいですよ。

――地域社会崩壊の中で、心を通わせるのは難しくないですか?

尾木 それだからこそ、家庭で普段からコミュニケーションの努力をすることが大切です。子どもと朝ご飯を一緒にしたり、夜もなるべくそうする努力をしたりするとか。心を通わせる努力ができないような国家なら、いずれ崩壊してしまいますよ。勝ち組、負け組だけの社会でいいんでしょうか。子育ては、一人ではできませんので、コミュニティでグループを作り、知恵を出してお互いに支え合う地域作りをすることが大切でしょうね。

――どこかに、いい具体例はありますか?

尾木 オランダに、ワークシェアリングというのがあります。不況でも投げ出されない、いわば社会のセーフティネットで、これだと両親のうちどちらかが家にいることになるんですよ。夫婦が協力して子育てをするので、子どもにいい影響を与えることになります。社会の構造を変えないで、あいさつだけではダメです。社会全体が支え合うことで、コミュニケーションの質が変わってきます。国としてのビジョンが問われているんですよ。

尾木直樹さん プロフィール
1947年、滋賀県生まれ。早稲田大学卒業後、私立海城高校や都内の公立中学校などの教師を長年務める。その後、教育評論家として、講演活動やテレビのコメンテーターなどとして活躍。現在、法政大学教授。また、臨床教育研究所「虹」を主宰し、教育現場などについての調査・研究活動もしている。「『よい子』が人を殺す~なぜ『家庭内殺人』『無差別殺人』が続発するのか」(2008年8月、青灯社刊)など著書多数。東京都武蔵野市在住。

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