デジカメ、楽器から健康チェックまで登場 携帯電話はどこまで進化するのか
携帯電話研究家・木暮祐一さんに聞く

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   かつて携帯電話と言えば、文字どおり「携帯できる電話・移動式電話」という意味だったが、ここ20年ほどで急速な変化を遂げた。「通話機能にとどまらず、様々な通信ができる情報端末」との意味を込めた「ケータイ」という呼び名も定着した。ここ数年を見ただけでも、ウォークマンケータイやスマートフォン、タッチパネル型ケータイなど、多機能化が目立つ。今後、ケータイ端末やサービスは、どう「進化」していくのか。展望を、携帯電話評論家の木暮祐一さんに聞いた。

――ここ10年ほどのケータイの発展は、めざましいものがあります。昔はショルダーフォンとよばれるものを使っていて、すごく重かったことをよく覚えています。

木暮   昔は、メディア関係者や政治家ぐらいしか持っていませんでした。当時から比べると、隔世の感がありますよね。携帯電話は、だいたい10年サイクルで進化していて、ネットワークの進化の歴史と密接に関連しています。
   「第1世代」と呼ばれるケータイは79年に誕生したのですが、1999年にサービスが終わっています。1993年には、「mova」に代表されるような、デジタル方式を採用した「第2世代」が登場しました。これも、あと数年でサービスが終了します。現在主流の「第3世代」が出てきたのが2001年で、現在は8年目ですね。「今のネットワークでできることは、すべてやり尽くした」というのが実際のところかもしれません。

2011年あたりが通信サービスのターニングポイント

ケータイの今後の展開について語る木暮祐一さん
ケータイの今後の展開について語る木暮祐一さん

――端末の機能は、どのように進化してきたのでしょう。

木暮   99年にはiモードが登場して、直後にEZweb(イージーウェブ)が始まりました。このようにして、ケータイがインターネットにつながったんですね。00年にはカメラ搭載のケータイがJ-フォンから初登場しました。01年には、アプリケーションがケータイ上で動くようになりました。表向きには「ゲームをするためのもの」と言われていたのですが、実は、これが「ケータイがPC化した」瞬間だったんです。ひとつのターニングポイントです。04年には「おサイフケータイ」が始まり、電子マネーとしての役割を果たすようにもなりました。

――この10年間のケータイの多機能化はすさまじい。-今後、どのような進歩を遂げていくのでしょうか。

木暮   現在のネットワークでの最大通信速度は下りは7.2Mbpsですが、ようやくPCでの少し前のブロードバンドの速度になっている、というところです。動画のサービスが登場して、ケータイ上で動画を見ることができ、一方で「着うたフル」といった、音楽をネットワークで購入する、というような動きも進んできた。
   第3世代が出てきた01年には「何やるの?」と困っていたのですが、皆さんが色々なアイディアを出した結果、ここ5年でニコニコ動画、ユーチューブ、高画質カメラなどが急速に発達しました。同じようなことが、第4世代の時も起こるのではないでしょうか。
   数年後には10Mbps以上速度が出るようになるでしょうし、第4世代が普及すると、100Mbpsは出るようになるでしょう。アナログ放送も終わることですし、2011年あたりが通信サービスについて何らかのターニングポイントになるのではないでしょうか。

――100Mbpsというと、今の「光」ぐらいの速さです。

木暮   これまでの例を振り返ってみると、ケータイはPCのちょうど3~4年後を追いかけているんです。例えば1995年にはウィンドウズ95が出て、その4年後にはiモードそしてEZwebが出る、といったように。グーグルがPC向けにサービス展開を始めてから3~4年後に、ケータイ向けのサービスが始まっています。PCの世界ではブロードバンドを生かしたサービスが多く展開されているのですが、同様のことがケータイでも起こるのではないでしょうか。

――端末について言えば、3~4年後には、どんな進化がありそうですか?

木暮   一時期、ノートPCに何でも詰め込みすぎて、ほとんど持ち歩けなくなったようなことがありました。逆に、現在は、目的・機能別に棲み分けが進んでいます。オールインワンのものもあれば、廉価版のPCもよく売れていますよね。
   これと同じようなことが、ケータイでも起きています。ユーザーが目的別にケータイを選ぶ傾向が出ています。例えばauは、ひとつひとつの機種に目的を明確に当て込んで作っている印象があります。「ケータイをカメラが使えればいい」という人は、カメラ機能が充実している端末を選ぶし、音楽を重視するユーザーであれば「ウォークマンケータイ」を選ぶでしょう。使う目的に応じた機能の分化が進んでいます。「高感度カメラケータイ」や「楽器ケータイ」、「3Dケータイ」など、特徴的な機種も色々と出ていますね。3Dケータイなど、3D液晶自体は以前から開発されていたのですが、これを実際に商品化してしまうところがチャレンジングですよね。
   ドコモは目的別に4つにカテゴリーを分けています。特に、「PRO」と呼ばれるハイエンドユーザー向けのカテゴリーでは、「ブラックベリー」などのスマートフォンにも力を入れ出しました。ただ、同社は慎重派と言えるかも知れません。数年前には、「905シリーズ」として、オールインワンの機種を沢山リリースしました。ビジネスパーソンなどには歓迎された一方、「時代にそぐわない」と判断された面もあったようで、方針転換に踏み切ったのだと思います。
   また、ソフトバンクは「安さ」のイメージ戦略に重点を置いているように見受けられ、業界を引っ張っていくことを期待しています。今後の動向が注目されます。

ケータイが生活者のインフラになっていく

ケータイは日常生活とは切っても切れない存在だ(写真はイメージ)
ケータイは日常生活とは切っても切れない存在だ(写真はイメージ)

――ビジネスパーソン向けのケータイはいかがでしょう。

木暮   欧米に比べると、日本のビジネスパーソンは、ケータイの使い方が下手だと思います。世界のスマートフォンユーザーを見ると、きちんと仕事の延長線上にケータイを位置づけています。移動時間を有効活用するためにケータイを使っているんです。「ケータイを上手く使うと、オフィスにいる時間を短くできる」と。逆に端末を作っている側も、そこは意識してきませんでした。娯楽性に目が行きがちでした。今後は、スマートフォンとケータイとの距離が短くなっていくのではないでしょうか。

――ケータイの機能が高度化するにつれて、PCとケータイの境目がなくなるのではないか、という声もあります。

木暮   今はケータイがPCを追いかけている状況ですね。機能も、PC並に近づいています。その中で、ケータイがPCと一番違うのは、その名称どおり「いつでも持ち歩ける」ということ。PCを持ち歩くということは必ずしも多くありませんし、ましてや、歩いて使ったりはしませんよね。
   ある有名タレントのコンサートに招待するキャンペーンの話ですが、00年末には「はがきとインターネット(PC)」しか応募方法がなかった。翌01年にはケータイから、その場でも応募できるようにしたんです。そうしたら、応募件数が2万から180万に跳ね上がった。ケータイは、PCよりも「持って歩く」と言う点で、世の中を変えていける。より生活に密着した形で、様々な影響を及ぼしていくのではないでしょうか。

――そう考えると、PCとケータイ、厳密な定義をしても、意味がなくなってくるのかも知れません。

木暮   使い分けが必要になってくると思います。メールや簡単な調べものであれば、十分ケータイでもできますよね。「デスクワークはPCでしっかりやる」というようになるのではないでしょうか。

――他に「ケータイならでは」と言えるものはありますか。

木暮   ケータイは1人1台普及して、個人を認証できる機械になっています。例えば政府が「電子母子手帳」みたいなものを計画しています。赤ちゃんの体重データなどを記録して、予防接種の案内がメールで来る、といった具合です。政府はこれをPCでやろうと考えているようなのですが、PCを使わない母親もいる。「ならばケータイでやるべきだ」というのが、私の考えです。写真を撮りだめして、大人になった時に振り返って見てみることも可能でしょう。ただし、ケータイ端末の中にデータを保存しても、機種変更の時になくなってしまう。そこで、「データはネットワークの上に置いておいて、端末は、認証してデータを見に行くための道具」という考え方が広まりつつあるんです。
   そうすると、電子母子手帳だけでなく、ケータイが保険証や電子カルテの代わり、つまり生活者のインフラになっていくのではないでしょうか。身の回りのデータがネットワークに保管されていて、どこでも使える、というのは大きいですよね。

――最近話題になることも多い「クラウド・コンピューティング」とは、このことですよね。

木暮   何も新しい話しではないのですが、ネットワークの高速化によって、ようやく実用的になってきたからなんです。  これを「だれがやるの?」という話しになるのですが、あまり儲からない分、端末メーカーや携帯電話事業者はやりたがらないですよね。比較的熱心なのがauですね。ヘルスケア系サービスに熱心です。一例が、「au Smart Sports」のような、「ケータイ持ってジョギングし、成果をチェックする」といったサービスで、自分が走ったり歩いたコースが記録され、消費カロリーも分かります。私たちに必要なサービスだと思うのですが、コンテンツ会社は、お金にならなかったので、やってこなかった。発展すれば、社会インフラになりえます。

「自分の情報をケータイに集約する」という流れ

――「ケータイの方がPCよりも期待されている」具体例はありますか。

木暮   一つの例は、ペースメーカーとの連携でしょうか。ペースメーカーは、これまではケータイとの相性が悪いと言われてきたのですが、これは10数年前の話です。日本では未認可の最新型のペースメーカーには、実はアンテナが付いているんです。日本でも近々認可されるとのことで、米国では10万人以上が使っているそうです。
   ペースメーカー自体が「体に埋めたコンピューター」になっていて、様々なデータを蓄積できる。加速度センサーなども付いていて、「どのように歩いたのか」も記録されます。蓄積したデータは体外に取り出す必要がありますが、そのための通信機能が付いているんです。集めたデータを、無線で体の外とやりとりしているわけです。
   今は専用の親機を介して、夜寝ている間にデータを吸い上げるのですが、将来的には、「体のデータをケータイで拾う」といったことが可能になるのではないでしょうか。そうすると、ケータイとペースメーカーは「切っても切れない関係」になりますよね(笑)
   これ以外にも、「身の回りの情報をどこに集めるか」を考えたとき、ケータイが一番わかりやすいんですよね。個人の持ち物であるからこそ、情報を箇所に集約した方が便利なんです。

――今後、「自分の情報をケータイに集約する」という流れは加速していくのでしょうか。

木暮   皆さんお気づきかも知れませんが、最初は電話帳しかデータが入っていなかったものが、メール、画像データなど、機種変更の時に移行しないといけないものが増えてきています。つまり、「なくしたとき」のダメージが大きい。
   その点、実は(JR東日本の)モバイルSuicaは、紛失しても大丈夫なんです。端末にチャージしているように見えて、実は金額のデータはサーバーに入っているので、端末をなくしても、ネットワーク経由でデータを新端末に移行できるんですね。 こんな風に、「データをネットワークに置いておく」という「クラウド」的な部分が、少しずつ認知されてきています。
   PCでは、SaaS(software as a service)と呼ばれる「多くのプログラムをネットワークの向こうで動かす」ことが広がりつつあります。これは「クラウド」の一種なのですが、この傾向がケータイにも波及していくように思います。実は、ケータイのネックは、電池の性能。これだと、電池を無理させることもないでしょうし、CPUへの負荷も少なくてすみます。ネットワーク経由で、大きなプログラムを動かせるとなると、可能性が広がります。

木暮祐一さん プロフィール
こぐれ・ゆういち 携帯電話評論家、武蔵野学院大学客員教授。1967年、東京都生まれ。1980年代後半より日本の携帯電話業界動向をウォッチ。ユーザー視点からのケータイ関連記事の執筆を行う。また、携帯電話に関連する講義を主要大学で受け持つ。1,000台を超える携帯電話のコレクションも保有。

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