田原氏が唱える拉致被害者 「8人死亡説」の根拠

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   討論番組での拉致問題をめぐる発言が、被害者家族の怒りを買っている。司会者の田原総一朗氏が「北朝鮮が死亡したと主張している8人は、実は外務省側も死亡していることを知っている」などと述べたことが「家族と多くの国民の気持ちを踏みにじるもの」として、批判を浴びているのだ。いったい、田原氏が「死亡している」としている根拠は何なのだろうか。

交渉にあたった外務省の当事者から直接聞いた?

   田原氏は2009年4月25日未明にテレビ朝日系で放送された討論番組「朝まで生テレビ!」で、日本政府が、横田めぐみさんや有本恵子さんなどの拉致被害者が生存しているという前提で北朝鮮との交渉に臨んでいることに対して、

「ところが北朝鮮は繰り返し、『生きていない』と言っているわけ。外務省も生きていないことは分かっているわけ」

と指摘し。国内の鑑定で偽物だとされた遺骨について、「米国で再鑑定すべき」との持論を展開した。

   この発言について、「家族会」「救う会」は、「確実な根拠も示さず被害者死亡説を公共の電波を使ってまき散らしたとすれば、著しい人命軽視であり、家族と多くの国民の気持ちを踏みにじるもの」と反発。田原氏とテレビ朝日に対して抗議文をファクスで送付した。

   同日開かれた会見でも、家族会の増元照明事務局長は

「このままでは、田原氏の伝聞による『死亡説』が流され、定着することになりかねない。(死亡説の)根拠を示せるならば、示していただきたい」

などと訴えた。

   抗議文への対応について、テレビ朝日広報部は

「抗議文の内容を詳細に検討した上で、誠意をもって対応します」

としており、田原氏側も、今後、何らかの追加説明を行うことを明らかにしている。

   その一方で、田原氏は事務所を通じて

「一次情報から(情報を)得ている。だが、情報源を言うことはできない」

ともコメント。発言内容には自信がある様子だ。実際、田原氏は、07年10月に訪朝した直後に早稲田大学で開かれたシンポジウムでも、北朝鮮高官から聞いた話を元に

「(横田めぐみさんなど)8人は死んでいるが、それ以外で生きている人はいる」

との見方を披露しており、「世界」08年7月号でも、

「宋日昊(ソン・イルホ、日朝国交正常化交渉担当大使)の説明に不自然だと感じられるところはない。どちらかと言えば、北朝鮮側が『死亡した』と発表した8人を『生きている』と主張している日本側の方に無理があるのではないか。それに、日本側が調査を依頼していない人々の中には生存者がいる、と、これは交渉にあたった外務省の当事者から直接聞いた」

と、「ネタ元」が北朝鮮側か日本側かのブレはあるものの、同趣旨の主張を展開している。

「拉致問題の全貌は、北朝鮮外務省当局者でも良く分かっていない」

   もっとも、専門家からは、田原氏の「死亡説」に懐疑的な声があがる。コリア・レポートの辺真一編集長は、

「外務省が『8人が亡くなっている』という話をしているのは、公式にも非公式にも聞いたことはありません。(田原氏は)北朝鮮担当者以外の、外務省関係者の『個人的な見方』を伝えているに過ぎないのでは」

と、懐疑的だ。ただ、「8人は絶対に生きている」とも言い切れないのが実際のところのようだ。拉致問題の担当大臣である河村建夫官房長官が08年12月17日、東京・有楽町の外国特派員協会で会見を開いた際、辺編集長は

「8名が間違いなく生存しているとの確証を持っているか。死亡した可能性は全くないと受け止めてもよいのか」

と質問。辺編集長は、「断固とした確証がある」との答えを期待していたのだが、実際の回答は

「『死亡した』との確固たる証拠がない以上、我々(政府)としては、生存としているとみて、救出に全力を挙げる」

と、腰が引けていると言われても仕方がないもの。このやり取りから、辺編集長は、

「北朝鮮は『亡くなっていることを証明できない』一方、日本側は『生存していることを証明できない』というのが公平な見方なのでは」

と、慎重だ。

   また、北朝鮮側も一枚岩でないことが、問題を複雑化させている様子だ。

「実は、拉致問題の全貌については、北朝鮮外務省当局者でも良く分かっていません。宋日昊や政府高官も、『表の人間』に過ぎず、奥深いところまでは把握していません。拉致にかかわったのは、工作機関などの『裏の人間』。金正日総書記は『裏』も掌握していますから、『真相は金正日のみぞ知る』ということです」
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