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「エコ」「海外」「商品先物」 投資信託に個人戻り始める?

   「エコ」や「海外」「商品先物」をキーワードに、投資信託に個人投資家が戻りつつある。リーマン・ショックをきっかけに低迷している投資信託だが、平均株価が「底」をうかがいはじめた2009年2月下旬あたりから、「個人が幅広くチャンスをうかがっている」(野村証券)という。

日興の「エコ・ファンド」は半月で795億円

   投資信託協会によると、2009年3月末の株式投信は1兆155億円を設定。解約が9317億円、償還が85億円で、752億円の資金流入があった。投信全体ではまだ資金流出が続いているので、株式投信は「大健闘」というわけだ。

   3月中旬の株価上昇を待っていたかのように、わずかの募集期間に数百億円を集めるヒット商品も続々登場している。浮かんでくるキーワードは「エコ」「海外」「商品先物」だ。

   日興コーディアル証券のエコ・ファンド、「日興グリーン・ニューディール・ファンド」は4月8日~27日までに795億円を集め、久しぶりのヒット商品となった。「エコ」に目を奪われがちだが、「じつは組み入れ銘柄を、海外企業に注目したことが個人投資家の目にとまった」と、日興はみている。

   トヨタ自動車や日立製作所など、単にエコ事業を行っているとの理由で株式を組み込んできた従来のエコ・ファンドとの違いを明確にして、米国の地熱発電の企業や、ノルウェーやドイツの風力タービン企業、ソーラーシステムのノルウェー企業、スペインのバイオエタノールを生産する企業、バッテリーのフランス企業や日本のGSユアサの株式を組み込む予定。日興は「投資家に新しい時代の息吹を感じてもらえた」と話している。オバマ大統領が唱える「グリーン・ニューディール」のイメージも後押し。「(追加型投信なので)まだ伸びる」と成長を期待する。

   野村証券の「野村新中国株投信」は3月27日の設定。その後の約1か月で、残高1200億円を突破した。世界的な金融不安の中にあって、いまだ中国は成長株。その人気もいまだ健在のようだ。

少しでも高い利回りを期待して動く投資家

   野村証券が4月13日~同22日に募集した「野村マンCTAセレクト・ファンド」は、期間中に約930億円を集めた。

   この商品は、募集期間や満期が決まっている単位型投信で、原油や債券の先物に投資するCTA(商品投資顧問)と呼ばれるヘッジファンドで世界最大の英マン・グループが運用する。CTAファンドの魅力は、投資した商品先物相場が下落しても運用益が狙えることにある。

   野村は「相場が株式や債券とはまったく別の動きをするので、分散効果を期待する個人投資家のニーズに応えている」と、好調の要因を分析する。

   09年1月の発売以降、残高を4300億円まで伸ばした「米国ハイ・イールド債券投信」。外国債券を組み込んだ投信も最近の売れ筋ではあるが、この商品はダブルB格以下と格付けが低い半面、利回りが高い米国債に投資した。「少しでも高利回りをと期待する投資家に好評だった」という。

   「株価しだいの、一時的な増加」と冷ややかな見方もあるが、「環境」「エコ」に敏感な個人投資家の食指が動くネーミング、また少しでも多くのリターンを求める個人が物色し始めていて、株価の上昇とともに証券会社も手応えを感じている。