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新型インフル「水際対策」で防げず 強毒性だったら大変な事態に

   ついに東京でも新型インフルエンザの感染が確認された。感染者である女子高校生2人は、いずれも成田空港検疫所での検査では「陰性」を示していた。それ以前に発生した神戸や大阪の感染についても水際では防げず、国内の感染者は250人を突破している。今回より毒性が強い新型インフルが上陸した場合を考えると不安がいっぱいだ。

検疫を止め、蔓延に備えるべきとの声も

   現在、成田空港など3空港では、2009年4月29日から米国、カナダ、メキシコの3か国から日本国内へ帰国・入国する人に対し、機内で名前、住所、連絡先や体調などに関する質問票を配布し、検疫官が確認、あわせてサーモグラフィー検査で体温の確認をする、という検疫体制を取っている。この過程で発熱などの症状が確認されると、「簡易検査キット」などを使用し、インフルエンザの検査を受けることになっている。

   だが、この機内検疫での水際対策を「限界がある」と新聞各紙が批判している。読売新聞は16日、神戸市内の高校生が感染していることを受けて「水際対策の『壁』破られる」として、各地で検疫を通過した人から感染が拡大している可能性がある、と指摘。東京での感染が確認された21日にも、中日新聞が「インフルの水際対策に『穴』」、朝日新聞も「簡易検査キットに限界」として、検疫の限界や、検疫に割いている医療関係者を各地に戻し、蔓延に備えるべき、との論調も目立っている。

   舛添厚生労働相は19日の閣議後の記者会見で、成田など国内3空港で実施している機内検疫について「まったく止める、というわけではないが、段階的に縮小する」と、新型インフルエンザ対策を水際対策から国内対策へ移す考えを示している。

限界はあるが「すり抜けた」というわけではない

   成田空港では現在、各地からの医師や看護師など医療関係者約170人で検疫を実施している。ただ、成田空港検疫所の担当者は、「水際で100%阻止するのは無理」だと話す。1週間程度と言われる新型インフルの「潜伏期間」がその理由で、「検疫時点で症状がない方にはチェックのしようがない」と話し、未発症者には打つ手がない、といった様子だ。今後もし強毒性のインフルエンザが発生した場合でも、「今回の体制は強毒性のものを想定しての体制なので、基本的にやり方は変わらないのでは」との見方を示している。

   厚労省インフルエンザ対策推進本部の担当者も、「検疫の時点で発症していれば水際で抑えられるが、潜伏期間中であれば見つけにくい」とその限界を認める。また、質問票についても「きちんと申告しなかったり、症状があったのに『ない』と書いて出したりする人がいる可能性があるのも事実」とし、「感染や感染拡大を予防するために正しい知識を身につけてほしい」と警告する。

   ただし、今回の東京の女子高校生2人に関しては、水際対策が功を奏しているというのだ。

「検疫時に配布されたマスクを着け、発症後は発熱外来を受診している。検疫官のアドバイス通り行動していることで、家族にも感染していない」

   また、帰国時の機内で座席が近かった「濃厚接触者」に関しても、検疫により個人情報を管理していることで追跡が可能になっており、今回も状況を把握できている、として「決して検疫を『すり抜けた』というわけではない」と水際対策の効果を強調する。今後の水際対策についても、発生状況や伝播状況を検討しながら、「当面は続けていくことになる」としている。

   ただ、強毒性のウイルスが発生した場合については、「WHOの判断に連動しますが、02年から03年にかけ発生した『SARS』の時のような渡航規制をかけ、がっちり守るということになるでしょう」としている。