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「カタログ」から「ネット」にシフト 通販大手「アイフォーン」も活用 

   長年、カタログ中心にやってきた大手通販会社も、最近はネット経由の売上げが増え、ここを柱にしようとしている。それでもまだ、カタログをみてネットで注文というところが多いが、競争が激しさを増すなか、カタログを持たないネット通販も出てきた。

千趣会、カタログを持たないネット通販も検討

   通販カタログ「ベルメゾン」を展開する千趣会は、米アップルの携帯電話「iPhone(アイフォーン)」を活用した通販を2009年7月1日にスタートした。

   「ベルメゾン」カタログ(40ページ程度)を無料でダウンロードでき、タッチパネル操作でページをめくったり拡大したりできる。新規客を取り込むのが狙いだ。アパレル会社ベイクルーズもアイフォーンでカタログのダウンロードを5月に始めたが、大手通販会社では初めての試みだという。

   千趣会はカタログと連動したネット通販「ベルメゾンネット」にも力を入れていて、08年度のネット売上げは663億4200万円で、07年に比べておよそ40億円伸びた。09年度は720億円、2010年度は900億円を目指す。

   また、同社は09年7月1日付で組織変更し、「EC事業開発部」を新設した。EC事業開発部では従来のベルメゾンネットとは異なるEC事業を展開する。

   ベルメゾンネットは紙のカタログと連動することで、カタログを見ながらネットで注文できるといった強みがある。その反面、連動させなければならないので、制限も出てくる。 中山茂EC事業開発部部長は、

「新規EC事業ではカタログがいらないネット通販も検討しています」

と明かす。

   例えばスーパーマーケットのタイムセールのように、時間帯によって価格を変えたり、たくさんの人が購入するほど値段が下がる「ギャザリング」の導入、さらにオークションのような形態もあり得るそうだ。ただし、他社がやっていない試みをする、というのが条件だ。詳細はこれから詰めていき、2010年春のスタートを目指す。

カタログの延長上では勝ち抜けない

   日本通信販売協会(JDMA)によると、通販市場規模は年々拡大していて、2007年は3兆8800億円と前年に比べて5%以上の伸びだった。08年の各社の売上高をみると不況のあおりは受けているが、対前年比2ケタ減という百貨店ほどの落ち込みはみられない。

   若い女性向け衣料の通販に力を入れているニッセン。通販事業の単体売上高は09 年1月が対前年同月比100.5%、2月同比98.3%、3月同比97.1%、4月同比102.4%、5月同比98.1%と、やや苦戦気味だ。

   ところが、ネット経由は伸びていて、09年1月が対前年同月比111.9%、2月同比111.8%、3月同比114.1%、4月同比116.3%、5月同比110.7%だった。

   衣料品から家具、インテリア、コスメ、グルメまで幅広く扱っているセシールも、ネット受注金額が07年は197億円だったのが、08年は210億円に増えた。

「ネットはカタログ制作のコストがかからない上に、商品を入荷したらすぐにサイトにアップできるというメリットがあるので、強化しています」(広報担当者)

   今後はカタログ中心からネットにシフトしていくほか、テレビショッピングも試験的に行っている。

   パソコンの普及によって、「Yahoo!ショッピング」「楽天市場」のようなポータルのショッピングサイトや価格比較サイトなどが出てきて、電子商取引(EC)が盛んに行われるようになった。カタログを主としてきた大手通販会社も、この流れを無視できずネット通販に参入せざるを得なかったようだ。

   ただ、ネットを強化しているとはいえ、カタログの延長上でサービスを行っているのが現状だ。

   前出の千趣会中山部長は、

「10年前からネット通販に力を入れてきましたが、その間にもネットを主とした通販が出てきて、機能もどんどん進化しています。そのなかで勝ち抜いていくには、他社にない独自性を出さなければなりません」

と話している。