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新興市場の再編加速 名証セントレックスが焦点

   大阪証券取引所が2010年4月1日をめどに、子会社のジャスダック証券取引所と合併する見通しになった。大証は10年10月にも、傘下の新興企業向け「ヘラクレス」と「ジャスダック」の両株式市場を統合し、新「ジャスダック」とする方針を固めている。大証は自身が培ったヘラクレスのブランドを捨て、知名度に勝るジャスダックの名称を継承する。

「国内の新興市場は多すぎる」

   国内の新興市場は東京証券取引所の「マザーズ」が存在感と実績で他を圧倒しているが、大証は新ジャスダックを東証マザーズに対抗する核に位置づけ、拡大を図る考えだ。今後、福岡証券取引所の「Qボード」、名古屋証券取引所の「セントレックス」、札幌証券取引所の「アンビシャス」を巻き込み、新興市場のさらなる再編が起きる可能性が高い。

   大証首脳は「国内の新興市場は多すぎる。2、3年以内に新興市場の再編は起こる。ただ、今こちらから動くと、かえってマイナスとなる」と述べている。大証は福岡証券取引所などを念頭に、タイミングを見ながら、新たなジャスダックへの合流を働きかける構えだ。

   国内の新興市場をめぐる動きはあわただしい。かつてジャスダックは日本証券業協会の傘下だったが、大証が08年12月、株式公開買い付け(TOB)を行い、子会社化した。大証は09年9月に両市場の売買システムを統合するほか、ジャスダック株の保有比率を、現在の76%から100%まで買い増し、完全子会社とする予定だ。大証とジャスダック証券取引所の経営統合は、当初、持ち株会社を設立し、両市場を傘下に収める案も検討された。しかし、大証が選択したのは、TOBで子会社としたジャスダックを吸収合併することだった。

新ジャスダック統合後が、実は正念場

   この点について、大証首脳は「統合に当たっては、時間軸の速さを重視したい。スピード感があるのは、持ち株会社化ではなく、合併だ」と解説する。ここで言う「スピード感」とは、ジャスダックとヘラクレスの両市場の完全一本化の速さを意図しているのは言うまでもない。大証としては、両市場を新たなジャスダックに統合した後が、実は正念場となる。東証マザーズへの対抗軸を築くためには、名証セントレックス、福証Qボードなどを巻き込む必要があるが、この戦略がスムーズに進むとは限らないからだ。

   大証に次ぐ存在である名証セントレックスの上場銘柄数は、ピークだった33社から現在は28社に減少。08年3月を最後に新規上場はなく、地元の新興企業の多くは、知名度に勝るマザーズやジャスダックを志向している。名古屋、福岡、札幌の各証券取引所とも、新興市場は上場企業数も売買代金もマザーズ、ジャスダックに遠く及ばず、成長戦略を描けないのが現実だ。日本証券業協会もかねてから、新興市場の再編の必要性を説いている。

   しかし、「名証などは独立意識が強く、大証が主導する新興市場再編への合流など潔しとしない」(証券関係者)といわれる。各証券取引所とも独自の看板を下ろしたくないのが本音だが、打開策が見つからない以上、新たなジャスダックとの統合に向け、大証との水面下の駆け引きに応じざるを得ないとみられる。