8時間の激論でゼロ金利決定 日銀が「決定会合」議事録公開

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   日銀は1999年1~6月の金融政策決定会合の議事録を公開し、ゼロ金利政策の導入を決めた99年2月12日の決定会合の議論の詳細が明らかになった。世界でも前例のなかったゼロ金利を採用したが、不安を抱えながら手探りで踏み込んでいった日銀の苦悩が克明に浮かんだ。

「アリスの国のようなワンダーランドへ踏み込むことになる」

   ゼロ金利を決めた時の決定会合は議論が約8時間にも及んだ。決定会合のメンバーは9人(総裁、副総裁2人、審議委員6人)。意見が割れたのは、まず景気判断だった。

   当時はデフレ不況と金融不安に直面し、政府は大型景気対策を次々と発動した。政策金利は既に年0.25%と極めて低く、「景気は悪化テンポが和らいでおり、(緩和は)整合的かどうか」(武富将審議委員)、「直ちに政策を変更すべき要因は見つからない」(後藤康夫審議委員)との異論が相次いだ。

   ただ、98年末には大蔵省が資金運用部の国債引き受けを停止するという話が伝わって、長期金利が高騰し、円高も進んだ。これを懸念した山口泰副総裁らはゼロ金利を主張し、議論は平行線に。植田和男審議委員が「(日銀見解は)景気の悪化テンポは緩やかになっているという判断に続き、足元の円高や長期金利上昇をみると、先行きのリスクは懸念されると付け加えざるをえない」と提案し、速水優総裁も「その線で考えたい」と引き取って、景気判断との整合性はようやく折り合った。

   だが、「未知の領域」(藤原作弥副総裁)への不安は拭いきれなかった。ゼロ金利にすると、金融機関が資金を融通する短期金融市場が機能しなくなる副作用の恐れがあり、「日銀が唯一コントロールできる市場の消滅も前提に新たな措置を打ち出すのか」(篠塚英子審議委員)、「童話のアリスの国のようなワンダーランドへ踏み込むことになる」(後藤委員)と戸惑いの声も続出した。

「経験がなく、何が起きるか若干不安」と胸中を吐露

   これに対し、速水総裁も「どの程度十分な効果を持つのか正直に申し上げて自信がない」「経験がなく、何が起きるか若干不安」と揺れる胸中を吐露。「0.15%へ下げ、市場の情勢を見た上でゼロに近い方向に下げることができるのではないか」と手探りで進む考えを示し、最後は8対1の賛成多数(反対は篠塚委員)でゼロ金利導入が決まった。

   政府の「圧力」もゼロ金利の背景にあった。速水総裁は1月19日の決定会合で「今朝も経済閣僚会議である大臣から『日銀はなぜ(国債)引き受けをしないのか』と質問された」と明かした。日銀の国債引き受けは財政支出の無制限な膨張につながりかねない「禁じ手」。2月12日の決定会合で速水総裁は「悪性インフレを招きかねず、日銀への信認を失わせる」と強く否定した。

   ただ、日銀も無策ではいられなかった。「金利で打つべき手が残っている以上、打ち尽くしてみる」(山口副総裁)とゼロ金利に活路を求めるほかなかった。政府の「圧力」をかわすための苦肉の策として導入された側面もあり、「走りながら考えるより仕方がない」(山口副総裁)と事実上の「見切り発車」だった。

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