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GMナタネ 在来種との「交雑」確認 環境省「大丈夫」と言うけれど…

   安全性に対する不安を指摘する声もある遺伝子組み換え(GM)作物が、新たな展開を見せている。これまでも、GM作物の種などが輸送中にトラックからこぼれたりして「自生」する例が確認されていたのだが、今度は、在来種とGM種が「交雑」しているケースが確認された。消費者団体などからは、これまでも「交雑は時間の問題」との指摘が出ていただけに、反発の声が高まる可能性もありそうだ。

三重県で「交雑ナタネ」確認

   GM作物をめぐっては、消費者団体から安全性について不安視する声が根強い。政府側の「食品や飼料としての安全性が確認されている」とする一方、消費者団体側は「危険性が確認されていないからと言って、安全性が確認されたことにはならない」などと主張。議論は平行線をたどっている。

   食品としての安全性以外に、「GM作物周辺の野生種を駆逐するのでは」との懸念もある。これまでも、トラックから落ちたと種などからGM作物が「自生」していたことが問題視されていたが、環境省が08年度に全国5箇所のGMナタネ輸入拠点で調査を行ったところ、三重県でGMナタネと在来ナタネとが交雑したとみられる固体が確認された。在来ナタネとみられる固体を分析してみたところ、除草剤耐性が確認されたことから明らかになった。

   環境省の在来生物対策室では

「在来ナタネも、ヨーロッパが起源とされている外来種。GMナタネは除草剤耐性があること以外は在来ナタネと変わらず、道路や河川敷などで特定の除草剤がまかれない限りはGMナタネが広がる可能性は低い。元々の生物に影響を与えることはなく、生物多様性の観点からは問題ない。そもそも、交雑は、GMナタネが承認された時点で想定されていたこと」

と、「問題はない」との立場だ。

GMの栽培規模は拡大の一途

   GM作物は、1990年代後半以降、米国を中心に急速に普及。米非営利団体の国際アグリバイオ事業団(ISAAA)の統計によると、1996年にはわずか170万ヘクタールだった全世界での栽培面積は、08年には1億2500万ヘクタールにまで拡大。GMは(1)特定の除草剤に強い遺伝子が組み込まれている(2)害虫に強い遺伝子が組み込まれている、といった点で従来種よりも生産性の向上が期待されており、栽培規模は拡大の一途だ。08年現在で、GMが栽培されているのは28か国に達している。

   現段階では、GM栽培28か国の中に日本は含まれていないが、多くのGM作物を輸入している。例えば、日本は大豆を年間400万トン輸入しており、このうちGM大豆が300万トン。ナタネはもっと「GM率」が高く、年に200万トン輸入するうち、8割がGMだ。

   実は2004年に、輸送途中にトラックなどからこぼれ落ちたと見られる「GMナタネ」が自生していることが確認されており、これが懸念材料になってきた。

   「遺伝子組み換え食品いらない!キャンペーン」(天笠啓祐代表)では、05年から全国の生協などを通じて輸入ナタネの陸揚げ拠点などを中心にセイヨウナタネの検体を集めているが、08年度の調査では、29都道府県から集まった1061点の自生ナタネのサンプルのうち、38点がGMナタネであったことが確認されている。GMナタネの自生が確認されたのは、茨城、千葉、静岡、愛知、兵庫、山口、福岡、熊本、大分の9県にのぼる。

   同会では、調査結果を通じて

「社会全体で非GMナタネ、非GM作物を選択するしか、根本的な対策はない」

などと主張。さらに、「交雑は時間の問題」と主張し続けており、今回の調査で、この懸念が現実化した形だ。今後、GMのあり方について、幅広い議論が求められることになりそうだ。