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石垣市誘致したコールセンター 不況で撤退検討

   沖縄県石垣市の肝いりで建設された施設から、コールセンターが撤退を検討していることがわかった。地域の雇用創出を目指して建てられたが、雇用は思うようには伸びず、2009年10月末からは実質的に、業務がない状況となっている。

   施設は「石垣市IT事業支援センター」といい、2007年7月に設立された。石垣市が新規事業の創出強化、雇用機会の拡充、持続的な経済の自立を目指し、整備には3億8000万円を投じた。施設内は、通信網の整備やバリアフリー化を実現。コールセンター誘致を目指した。

400人規模の雇用を目指したが…

   これに応じたのが、全国各地でコールセンターを運営している「もしもしホットライン」(本社・東京)。センター2階・3階に入居し、2007年7月から業務を始めた。同社は沖縄では那覇2か所、名護1か所でもコールセンターを運営している。

   ところが、従業員数はその後、思うように増えなかった。オープン以来、約50人で推移し、センター2階の半分だけしか利用されていなかったという。石垣市が目標としていた最大400人規模の雇用には遠く及ばなかった。

   石垣市では2006年~2008年、地域提案型雇用創出促進事業として「コールセンターオペレーター養成講座」を行った。受講者275人は、ビジネスマナーや電話応対、苦情対応を学んだ。そのうち、このコールセンターでの雇用に結びついたのは、30人だけだった。

10月末を最後に契約社員41人は自宅待機

   「もしもしホットライン」の広報・IR室は、「石垣島で業務を行うことで得られる顧客メリットを明確に訴求することが出来ず、安定的業務を定着させることが出来なかった」と説明する。10月20日を最後に委託企業先の契約期限が切れ、業務がなくなった契約社員41人は、自宅待機となっているという。

   石垣市の情報推進課は「不況もあって、思うように雇用が伸びていなかったようだ。地元の雇用を考えると深刻な問題だ。継続を要望したい。ただ、向こうの業績のこともある」と話す。場合によっては新たに、企業誘致を行いたい考えだ。市の別の関係者は「設備は十分に整っている。ならなるべくならば雇用に結びついて欲しい」ともらす。

   ある業界関係者は「コールセンターはふつう、人件費が安いところに置かれます。しかも沖縄の場合は経済特区として、数年前から優遇措置がありました。石垣市もその流れの中で、仕事ありきで施設を作ってはみたものの、さあこれからという時にリーマンショックがあった。この経済状況の中、業務が少なくなっていたのだろう」と話す。

   なお、「もしもしホットライン」は沖縄県内にある他の事業所については、「一定の競争力(顧客価値)を維持しており、撤退の計画はありません」としている。