トヨタF1撤退の背景に 経営の「水ぶくれ」高コスト体質

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   トヨタ自動車が自動車レースの世界最高峰、フォーミュラワン(F1)から2009年シーズン限りで撤退すると発表し、各界に衝撃を与えた。大手全国紙がF1を1面で取り上げることは稀だが、トヨタ撤退のニュースは皮肉にも堂々の1面に登場。08年のホンダ撤退を上回るインパクトがあった。

   ホンダに次ぐトヨタの撤退で、F1に参戦する日本メーカーはゼロとなり、日本人ドライバーも空席となる可能性が高い。モータースポーツは世界的に氷河期に向かっているようだ。

ライバルメーカーと比較しても業績回復の遅れ目立つ

   08年秋のリーマン・ショックに伴う金融危機の影響で、ホンダがF1、スバルとスズキがF1と並ぶ世界最高峰の世界ラリー選手権(WRC)から撤退したが、トヨタは2012年までのF1参戦を明言。世界同時不況といえども、日本を代表するリーディングカンパニーのトヨタだけは経営余力があると思われていただけに、「トヨタよ、お前もか」との思いがファンの間では強い。

   しかし、冷静に考えると、トヨタのF1撤退には伏線があり、必然的な帰結と言えなくもない。それはライバルメーカーと比較したトヨタの業績回復の遅れだ。エコカー減税を追い風に、プリウスやヴィッツなどの販売は好調だが、トヨタは過去の需要ピーク時に増設した生産設備が過剰なため固定費がかかり、2010年3月期連結決算も2期連続で営業赤字が続く見通し。ホンダや日産が一足先に黒字に転換したのとは対照的だ。

   F1は年間数百億円の経費がかかり、部品メーカーなどにコスト削減を求めるトヨタとしては、F1撤退は経営的にやむをえなかったようだ。トヨタの豊田章男社長は「現在の経営環境や中長期的な観点から苦渋の決断をした」と、理解を求めた。

   トヨタのF1撤退で、トヨタが育てた日本人F1ドライバー、中嶋一貴と小林可夢偉の来季も見通せなくなった。豊田社長とともに会見したチーム代表の山科忠専務が「中嶋と小林をここまで育てて、できれば、どこかのチームに乗せてあげたい」と言葉に詰まり、男泣きしたシーンは、テレビニュースで繰り返し放送された。

ルノーもF1撤退を協議、と報道

   F1をめぐっては、ブリヂストンもF1へのタイヤ供給を来シーズンでやめると発表。現在、F1タイヤはブリヂストンのワンメイクで、米グッドイヤーや仏ミシュランは既にF1へのタイヤ供給をやめており、新たな供給メーカーとして韓国のクムホが名乗りを上げている。

   トヨタの撤退で、F1に参戦する大手自動車メーカーはフェラーリ、ルノー、メルセデス・ベンツとなる。トヨタに続き、ルノーもF1撤退を協議しているなどと報じられており、このままではF1の存在自体が危うくなるとも限らない。

   しかし、悲観するばかりではいけない。豊田社長は自らステアリングを握って耐久レースに出場するなど、世界の自動車メーカー社長の中でもプロ級の腕前を持ち、自動車を愛する異色の経営者として知られる。トヨタは「今後はモータースポーツで得た経験を生かしながら、スーパースポーツ『レクサスLFA』や小型FRスポーツなど、お客様をワクワクさせる市販車の開発に邁進していく」「レース参戦や気軽に楽しめるイベントの企画など、モータースポーツの発展に積極的に取り組んでいく」と明言している。小型FRスポーツは豊田社長が陣頭指揮を執り、スバルと共同開発中の次世代スポーツだ。世界のトヨタはF1とは異なる形で、ユーザーのスポーツ心をつかむ次世代戦略を打ち出してくるはずだ。

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