「アバクロ」銀座激戦区にオープン 「取材お断り」戦略の損得勘定

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   米カジュアル衣料ブランド「アバクロンビー&フィッチ」がアジア1号店を東京・銀座にオープンした。近くに「H&M」「ユニクロ」「ZARA」が店を構えるファスト・ファッション激戦区で、「アバクロ」がしかけた戦略とは。

   日本ではこれまでも一部のセレクトショップやネット通販で購入でき、30、40歳代を中心に「アバクロ」の愛称で親しまれている。アイドルグループ「SMAP」の木村拓哉さんや歌手の浜崎あゆみさんなど芸能人のファンもいることで有名だ。その「アバクロ」がアジア初の店舗を東京・銀座にオープンするとあって注目度が高く、2009年12月15日の初日は開店前からお客が長い列をつくった。

イケメンの「ストアモデル」13人が店の前に集まる

   銀座店は全11フロアの大型店舗で、吹き抜けのある高級感のあるつくりだ。メンズとレディースを展開し、カジュアル衣料のほかにドレッシーなラインもそろう。「カジュアル&ラグジュアリー」をテーマとしていて、価格はTシャツが5000円台、デニムが2万円台、パーカーが1万円台から、ジャケットが3~4万円台とほかのカジュアル衣料よりも高めだ。

   一方、「アバクロ」がオープンしたのは、安いカジュアル衣料が集まるファスト・ファッション激戦区で、ここ数年出店ラッシュが続いている。08年秋に1号店を出店したスウェーデン発のカジュアル衣料「H&M」や、09年10月に従来の1.5倍に増床した「ユニクロ」、スペイン発の「ZARA」が出店している。

   どんな手で来るかと業界関係者の注目が集まるなか、「アバクロ」はオープン前の12月10日に一風変わったパフォーマンスを行った。イケメンの「ストアモデル」13人が店の前に集まるというもので、モデルの男性はシャツの前ボタンを全開し、鍛えあげられた体を披露した。しかし、それ以外ではオープン前と当日に「取材を一切受け付けない」という徹底したメディア戦略をとった。

   ファッション流通ビジネスに詳しい、ディマンド・ワークス社(東京都港区)代表の齊藤孝浩さんは、

「マスメディアをまったく利用しないシークレット戦略で期待を煽るということが考えられますが、そもそも大手SPA(製造小売業)では広告宣伝に対しての考え方が大きく2つに分かれています。H&Mやギャップ、ユニクロのように広告宣伝に積極的なところと、アバクロやZARA、米リミテッド・ブランズのように積極的ではないところがあります」

という。

   広告宣伝しない理由はいくつかある。まずはメディアを通さず客と直接コミュニケーションをとりたいというもの。取材を受けても編集されて一部分だけを使われるため、ブランドがお客に伝えたいイメージと異なる場合があり、アバクロはオープン後も取材を受けていないそうだ。もう1つは、広告宣伝にお金をかけるよりも好立地に出店したいという経済的な理由だ。立地はSPAでもっとも重要な要素だと考えられている。

魅力は「五感を刺激する」店作り

   それにしてもテレビCMなどでがんがん宣伝しているユニクロやH&Mが近くにあって、アバクロ銀座店はやっていけるのだろうか。

「アバクロストアの本当の魅力は『五感を刺激する』店作りです。と言っても、味覚はないと思いますが」

   前出の齊藤さんはアバクロの強みはこんなところにあると指摘する。

   まずは「視覚」。店内の内装は高級感のあるつくりで、店の雰囲気を盛り上げるために採用されているというイケメン「ストアモデル」がお出迎えする。さらにクラブにいるような大音量の音楽が「聴覚」を刺激し、オリジナルフレグランスが香り「嗅覚」も満たされる。床はふかふかのじゅうたんがひいてあり、商品のさわり心地もいい。

   個人のブログでも、「あの独特な空間はテンションが上がり好き!! 店内のセクシーな香り…カッコいい店員さんも同じ香り…薄暗い空間で大音量の音楽…」と書き込まれていて、アバクロでしか味わえない雰囲気に虜になるお客もいるようだ。

   ただ、前評判はいいが、懸念点もあると齊藤さんは指摘する。

「安いファスト・ファッションと比較されて報じられていますが、アバクロを知らなかった人には、ただ高いブランドというイメージを持たれてしまい、マイナスだと思います。今後、どんな価格戦略を打ち出していくのか、業界の中で注目されています」

   そうでなくとも消費が落ち込んでいる日本で高めの価格帯が受け入れられるのか、疑問が残る。一方で強気の価格設定をしているのは、日本進出が本命ではないから、とも考えられそうだ。アバクロにとって今回、日本初の店舗であると同時に、アジア初の出店となる。中国人などアジアから観光客が集まる銀座にまず出し、アジア圏内に広くアピールした上で、中国で多店舗展開するのではないか、と齊藤さんは見ている。

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