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株主優待相次ぐ廃止 リストラで投資の魅力半減?

   景気悪化による業績不振を理由に、上場企業が株主優待制度を相次いで廃止、中止している。投資家にとって株主優待は、配当金や株価の値上がり益とともに株式投資の楽しみの一つ。「株主優待」を換金すれば、配当と合わせて20%を超える高利回りになるものも少なくない。企業側からしても、個人株主の獲得や?ぎとめに役立っていた。しかし、企業はリストラ策を着々と打ち出していて、株主にもそのシワ寄せが回ってきた。

   大和インベスター・リレーションズ(IR)によると、2009年9月末時点で株主優待を実施している企業は1038社。上場企業に占める、株主優待実施企業の割合は27.3%で、前年同月に比べて4.7%減少した。08年10月以降に、新たに34社が制度を導入したが、85社が廃止・中止したため、前年との比較では51社減少した。

09年は51社が撤退 初の減少

   2009年に株主優待制度を廃止・中止した主な企業は、ヤマハ発動機や小僧寿しチェーン、関西汽船などがある。日産自動車は09年3月期の、わずか1回の実施で一時中止とした。12月には東証マザーズに上場する綜合臨床ホールディングスや、フジ・メディア・ホールディングス傘下で通販のセシールが廃止を明らかにしている。

   大和IRは、「前年比で減少したのは調査以来16年間で初めて」という。廃止の理由は「上場廃止のため」が46.5%を占めるほか、「経営不振のため」39.5%、「公平な利益還元のため」14.0%となっている。

   一方、新設した企業は子育て支援のJPホールディングスや、不動産の飯田産業、大手スーパーのマルエツなどがある。06年以降に上場した企業が多いが、エイチ・ツー・オー・リテイリング(旧阪急百貨店と旧阪神百貨店)や住友鋼管、化学工業のエア・ウオーター、水産加工の極洋といった老舗企業もある。

   ただ、新設企業も08年に比べて31社減った。

実施企業は「配当が低い」との見方も

   そもそも株主優待は、少数株主の企業が個人株主を増やす目的で導入した例が多い。加えて、自社製品がユーザーの手元に届くので、一定程度の宣伝効果が見込めるようになったこともあって増えていった。

   ところが、実施企業をみると小売業や農林水産業、輸送・運輸関連、不動産業などの業績不振の企業が少なくなく、株主優待に自社製品を使うことで、「現金を社外に出したくない」との事情がみてとれる。このため、業績が向上しなければ、さらに廃止・中止を打ち出す企業は増えることになりそうだ。

   株主優待が減る傾向に、ある個人投資家は「配当が十分あれば、優待制度はいらない」と話す。「実施する企業が増えたことで、配当の代わりに株主優待を手厚くするので(配当は)大目にみてくれといった風潮があって、利益の増減に見合った配当をしてくれない」というのだ。

   株主優待を実施している企業の配当性向は比較的低いとの見方もあって、それが株価が上がらない遠因になっているともいわれる。

   会社法には「株主平等」の原則がある。持ち株数に応じて発言権も利益収受も平等に扱われるというものだが、株主優待制度はすべての株主に同じようにメリットをもたらすとは限らない場合があって、それが「株主平等に反する」との声もある。