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「品質こそ生命線」だったトヨタ ブランドイメージ崩壊のピンチ

   世界同時不況で産業構造が大きく動き始めた2008年、創業71年目にして自動車販売世界一に立ったトヨタ。そのとたんに、自動車の永遠の課題である安全性で問題を起こし、強烈な逆風にさらされている。ブランドイメージは毀損し、株価の下落も目立つ。販売店では「プリウス」だけでなく他のトヨタ車に注文キャンセルが出るのは時間の問題だ、という見方もあり、トヨタの苦境は次第に深刻なものとなっている。

   トヨタ自動車の豊田章男社長が2010年2月5日、アクセルペダルのリコールなど一連の安全に関わる品質問題について会見し、「複数の地域、モデルでリコールが発生し、多くのお客さまに大変なご迷惑とご心配をおかけしたことを心からお詫び申し上げる」と陳謝した。

4年前の記者会見でも「一日も早く信頼を取り戻す」

   また、日本で2009年、ベストセラーになったハイブリッド車(HV)「プリウス」のブレーキに苦情が寄せられていることには「新車はすでに改善している。すでに購入いただいたお客さまにはできるだけ早く対応できる方法を検討するよう指示している」と話すにとどまった。

   「プリウスに限らず全商品について、品質でお客さまに不安を与えるのは製造業のトップとして非常に残念」。章男社長は5日午後9時から急遽トヨタ名古屋オフィスで開いた会見で悔しそうに語った。

   章男氏は4年前にも同じような言葉を言ったことがある。2006年7月、東京都内での記者会見。当時副社長で品質保証担当に就いたばかりの章男氏は「ハイラックスサーフ」のリコール問題で見解を問われ、

「お客さまに『自分の車は大丈夫か』と不安にさせたことは大変はずかしい。一日も早く信頼を取り戻す」

   と答えた。「はずかしい」との言葉に渡辺捷昭社長(当時)の陳謝よりも一歩踏み込んだ自己反省がにじんでいた。

   自動車メーカーにとって「品質が生命線」(章男社長)なのは言うまでもない。

   だが、それだけで競争を勝ち抜けるわけではない。地球温暖化防止や資源枯渇に備えて、HVや電気自動車(EV)など次世代技術を開発し、量産しなければならない。中国、インドの台頭で、コスト競争はかつてない局面に入りつつある。世界中の生産・販売を遅滞なく動かすには膨大な経営資源を必要とし、日本流と現地の事情を巧みに組み合わせなければならない。文化の異なるサプライヤーとも付き合わなければならない。

一発の不具合で1千万台ものリコールになりうる構造

   トヨタは社長をヘッドに「グローバル品質特別委員会」を新設し、外部の有識者の意見も採りいれながら安全品質の徹底に取り組むことを表明した。品質問題は時間とともにいずれ終息に向かうだろう。

   しかし、本当に問われるのは1年がたち2年がすぎ、平時に戻ったあとだ。

   コスト競争力や環境性能、グローバルオペレーション、収益力とともに安全品質が自然体で確保されなければ、何年かおきに品質問題が繰り返されることになるだろう。

   車種を超えた部品共通化が当たり前の今、トヨタの規模になれば一発の不具合で1千万台ものリコールになりうることが今回のアクセルペダル問題で証明された。プリウスのブレーキについては本当に「不具合」に当たるのか微妙な点はあるが、結局トヨタはリコールする方針で、ここでも対応の遅れを印象付けてしまった。

   トヨタは30年前から品質では世界のリーダーと言われてきた。販売世界一になった今、品質と規模と先進性とコストを高度にバランスさせる術はトヨタ自身が築くしかない。とりわけ品質に関しては、市場情報をどれだけ早く正確に分析して商品に反映させるかがカギを握る。巨象は敏捷さを身につけられるだろうか。