「無料全文公開」で10万部突破 出版界驚かす「フリー・キャンペーン」

2010/2/13 17:57

無料ダウンロード1万回が起爆剤に

   書籍の発売前に「電子版」をネットで無料配布するキャンペーンは、インプレスが初めてではない。日本で本格的に実施したのは、09年11月にNHK出版が『フリー <無料>からお金を生み出す新戦略』(1890円)の発売に合わせて「全文無料配布」を敢行したのが最初といえる。

   同書は、米IT誌『WIRED(ワイアード)』編集長のクリス・アンダーソン氏が執筆したベストセラーの日本語版。インターネットで主流になっている「無料サービスから収益を生み出す仕組み=フリーミアム(freemium)」について考察している本で、そのテーマにあわせて自らの書籍の内容も「無料公開」することにしたのだ。

   だが国内では異例の試みなので、社内では営業部を中心に

「本の売り上げダウンにつながる」

と反対する声もあがった。そこで書店に配慮して無料配布期間は発売前の2週間に限るとともに、ダウンロード数も1万回に限定することにした。

   しかし不安は杞憂に終わった。無料配布キャンペーンは大きな反響を呼び、わずか2日で1万ダウンロードを達成。ブログやツイッターで『フリー』の話題が広がった。それだけでなく、紙の書籍も爆発的に売れたのだ。

   11月下旬に発売されると、『フリー』はネット書店のアマゾンで快調に売れ、タレント本やコミックと総合1位を争った。東京の大型書店でもビジネス書の1位にランクイン。書店によっては総合1位になることもあった。

「書名が『フリー』なので、無料と間違えて持っていってしまっているのではないかと思うくらいよく売れた」

と丸善丸の内本店のスタッフが驚くほどの人気ぶり。発行部数は、発売から約3ヶ月で8刷14万部に達している。編集を担当したNHK出版の松島倫明さんは、

「今回のキャンペーンですごく思ったのは、僕らには『本』というマネタイズする便利なものがあるということ。本というお金に換金できるアトム(物)があり、その本を買うという習慣がある。今後の新しい売り方としては、電子書籍を売るというやり方と、電子を無料で配ってアトムを売るというやり方の2つがあるのではないか」

と話している。

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