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イオンPB戦略を修正 商品数拡大優先見直し

   小売り大手のイオンが、商品開発段階から自社で企画するプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の商品戦略を軌道修正し始めている。

   PB商品の売り上げ拡大のため、「衣」「食」「住」各分野の商品数拡大を優先してきた従来の手法を見直し、単品で売上高10億円を稼ぐ売れ筋商品を12年までに現状の6倍の300品目に増やす。さらにPBだけではなく、メーカーブランド(NB)品も組み合わせ、売り場全体で売上高を底上げできるよう商品構成を見直すという。

商品数を段階的に1割程度絞り込む

   同社商品部門の最高責任者である久木邦彦執行役は、このほど開かれたトップバリュの商品説明会で、現在約5000品目ある商品数を段階的に1割程度絞り込むと説明。10年2月期のPBの売上高は前年比2割増の約4500億円の見込みで、11年2月期に約7500億円にするというこれまでの目標の達成は「1~2年遅れる見通し」という。

   同社が「売れ筋商品」の「先頭ランナーに」と期待するのが、2010年3月から売り出すレトルトカレー「タスマニアビーフカレー」だ。同社が豪州に保有する自社牧場で育てた牛肉を使い、「一流ホテルのカレーの味を実現した」と胸を張る商品。価格は現在のPBレトルトカレーの3倍程度の278円の予定だが、それでも「一流ホテルの製品の半値以下」(同社幹部)。

   自社牧場のタスマニア牛肉を、店頭で生肉として販売するほか、焼肉、ハンバーグ、サイコロステーキなどに加工し、総菜や弁当などとして系列のコンビニエンスストアや持ち帰り弁当店、レストランなどでも販売するスケールメリットを生かす。「PB商品に根強い『価格が安い』という印象だけではなく、『価格以上の価値』を実現した」という。

   しかし、09年7月に350㍉㍑缶1本100円で売り出した第3のビール「麦の薫り」は、価格設定などをめぐり製造元のサントリーと意見の相違が表面化。十分な商品量を確保できないとして近く販売を中止する。酒類では、4㍑入り焼酎のように価格の安さで飲食店からの引き合いが続いている商品もあるが、第3のビールはすでに家庭の定番品になっており、新たな製造メーカーを早急に確保する必要がある。

全体の売上高拡大が至上課題

   今後の全社的な課題としては、「カテゴリ・マネジメント」と言われる売り場全体の売上高拡大が至上課題になる。同社は昨年夏に「880円ジーンズ」を売り出し、半年間で約130万本売る大ヒットとなった。同社内には「従来はジーンズをはいたことがなかった中高年世代などが衣料品売り場に新しい客層を呼び込む効果があった」と評価する声も大きい。しかし、NB商品を販売していた前年までは平均単価が3000円以上といわれたジーンズの単価は大幅に減少。さらに、ジーンズと合うベルト、シャツといった周辺商品を組み合わせた品ぞろえが不十分だったため、販売機会を逃がし、衣料品部門の不振を跳ね返すまでには至らなかったのが実情という。

   衣料品部門では09年に「880円ジーンズ」と、約1000万枚を売り切った保温性の高い肌着「ヒートファクト」が2大ヒット商品だが、商品展開に厚みがないため、「魅力のあるNB商品の活用が当面は不可欠」というのが同社商品関係者の総括だ。