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第一生命4月1日上場 日本生命など大手の対応に注目

   国内生命保険2位の第一生命保険が2010年4月1日、相互会社から株式会社に転換し、東京証券取引所第1部に上場する。上場で機動的な資金調達が可能になるが、株主からの圧力が高まり、買収されるリスクも高まるわけで、経営の自由度に一定の縛りもかかる。日本生命など相互会社形式の大手は、上場後の第一生命の経営戦略を分析し、相互会社の維持か転換かを検討する考えだ。

   発行株式は1000万株、売り出し価格は14万円。時価総額1兆4000億円規模で、近年では98年のNTTドコモ(売り出し総額2兆円超)以来の大型上場となる。

日本生命は相互会社を維持する考え?

   相互会社は、保険料を出す契約者が支え合うことを理念とする保険会社特有の形態で、大手6社が採用。建前上は非営利の法人で、利益は契約者に分配するのが基本だ。しかし第一生命は、国内市場が伸び悩む中、経営資源を海外展開などの新規投資に振り向けるには、株主から集めたリスク資金をある程度自由に使える株式会社に転換することが得策と判断した。

   第一生命は上場後、増資や社債発行などで調達した資金を、成長著しいアジア事業でのM&A(企業の合併・買収)などに投じる方針。また、契約者配当を重視する相互会社では規制されていた無配当型の保険も拡大する見通しだ。配当を出さない分、保険料を安くできるため人気が高まっており、商品の自由度が高まるのを契機に攻勢をかける。

   第一生命の動きを受け、大手生保も対応を取り始めた。日本生命は、株式会社の資本金にあたる「基金」を増強する方針だ。資金を潤沢に持つことで成長投資を確保し、国内外のM&Aなどに機動的に対応する構え。契約期間が長い生保は、長期的な視点での経営が求められる。このため、株主から短期での収益力を問われる株式会社は合わないと判断、相互会社を維持する考えだ。

   ただ、第一生命が商品構成の多様化などで攻勢をかけてくれば、他の大手も静観を決め込むことはできない。「第一生命以外にも株式会社に転換するところが出てくるとか、生保では明治安田以来途絶えている大型統合などもあり得る」(証券アナリスト)との見方は根強い。

GDPを0.1ポイント程度押し上げる

   一方、第一生命の上場に伴い、保険契約者には株式か現金が給付されるため、景気浮揚効果への期待も浮上している。株式会社化で、会社の「保有者」が契約者から株主に変わるため、これまでの保険料収入で蓄積してきた利益を、株式か現金の形でいったん契約者に返還するためだ。

   利益への「貢献度合い」に応じて契約者ごとに株式の割当数が決まり、1株未満だったり、現金を希望する契約者には現金が給付されたりする。売り出し価格で算出すると1兆4000億円分の現金や株式が、約738万人の契約者に行き渡る計算だ。経済効果は09年の定額給付金(約2兆円)に迫り、エコノミストの多くは、国内総生産(GDP)を0.1ポイント程度押し上げると推計する。

   現金の支給がゴールデンウィークと重なるため、より消費浮揚効果が期待できるとの声もある。また、これまで株式を持ってなかった契約者も、第一生命株を保有する新規口座を開設するため、回復基調の株式市場を一段と活性化するとの期待も出ている。