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亀井大臣またまた変化球 預金保険料率引き下げで懐柔?

   政府の郵政改革は、ゆうちょ銀行の預け入れ限度額(1人あたり1000万円)を2000万円に、かんぽ生命の保障限度額(同1300万円)を2500万円に引き上げることでひとまず決着したが、民間金融機関の反発は根強い。

   こうした中、亀井静香金融・郵政担当相は、金融危機に備え銀行などが負担している預金保険料の引き下げに言及した。銀行を懐柔する思惑があるが、銀行界は「引き下げで負担が減るのはゆうちょ銀も同じ。取引にはならない」(地銀幹部)と冷めた目で見ている。

「民間とゆうちょ銀の負担が同じように減るだけ」

   亀井担当相は2010年4月2日の会見で「(預金保険料の)負担がきついなら、(料率の)引き下げを検討するのはやぶさかではない」と述べた。郵貯の限度額引き上げで、銀行や信用組合・信用金庫の預金が流出するとの懸念に答えたもの。保険料の負担を軽くすることで、郵政改革に理解を得る狙いがある。

   金融機関の預金保険制度は、金融機関が破綻した時に、預金1000万円までと、その利息を保護する制度。預金保険機構が全国約600の金融機関から毎年度、預金残高の一定割合を保険料として集め、積み立てた「責任準備金」が預金保護の原資となる。保険料率は0.084%で、金融不安が高まった96年度に従来の7倍に引き上げられて以降は、同率を維持している。09年度の保険料総額は6411億円だ。

   民間金融機関にとっても、保険料が引き下げられれば収益改善につながるため、反対はしにくい。ただ、預金保険料を支払うのは、ゆうちょ銀も同じで、地銀などからは「民間とゆうちょ銀の負担が同じように減るだけで、限度額引き上げを受け入れる材料にはならない」との声が出ている。

保険料率の引き下げは既定路線?

   そもそも、保険料率の引き下げが遡上に上るのは既定路線。90年代後半以降に金融機関の破綻が続くと、責任準備金の取り崩しが進み、02年度には準備金に4兆円の欠損が生じた。しかし、金融不安が一服して10年度には欠損が解消される見通し。それを機に預金保険機構は、保険料率についても将来の引き下げが可能か検討を始める機運が出ていた。このため、「料率引き下げで、民間金融機関に恩を売ることにはならない」(大手行幹部)としらけたムードも漂っている。

   亀井担当相は2月にも、信金・信組についてはペイオフ(預金の払戻保証額を元本1000万円とその利息とする措置)の上限を上げて郵貯への預金流入を防ぐ考えを提案した。中小金融機関を取り込んで郵貯限度額引き上げの流れを定着させる考えだったが、「地銀なども同様にペイオフ上限が引き上げられれば、小規模金融機関からの預金流出が加速する」と信金・信組が反発、撤回した経緯がある。

   郵政改革を巡る閣内のしこりが残る中、亀井担当相から投げられた癖玉にどう反応するか。民間金融機関は慎重に検討している。