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ポーランド大統領の飛行機事故 首相ツイッター発言に憶測飛ぶ

   鳩山由紀夫首相が、ポーランドのカチンスキ大統領夫妻の飛行機事故についてツイッターで言及した内容が波紋を広げている。「大統領の強い思いが、この悲劇につながったのでしょうか」というくだりがさまざまな憶測を呼んでいる。ポーランドとロシアの間のセンシティブな問題にからむだけに、「もっと慎重であるべきだった」との声があがりそうだ。

   第2次世界大戦中に旧ソ連の秘密警察がポーランド軍の将校など2万人以上を銃殺した「カチンの森」事件から、2010年で70年を迎える。ロシアとポーランドは、事件が起きたロシア西部のスモレンスク近郊で別々に追悼式典を開くことになっていた。

「大統領の強い思いが、この悲劇につながったのでしょうか」

鳩山首相のツイッターでの発言は波紋を広げそうだ
鳩山首相のツイッターでの発言は波紋を広げそうだ

   カチンスキ大統領はポーランド側の式典に向かう途中で事故に巻き込まれた。政府専用機(ツポレフ154型機)は2010年4月10日17時前(日本時間)にスモレンスク空港近くの林に墜落、乗員乗客96人が死亡した。犠牲者の中には、大統領夫妻以外にも、外務次官、中央銀行総裁、国会議員、事件の犠牲者遺族が多数含まれていた。いわば、「因縁の地」で悲劇が繰り返された形だ。

   鳩山首相は、事故から数時間後の4月10日夜には、弔電を同国のトゥスク首相とコモロフスキ下院議長宛に送っている。翌4月11日の18時8分にこう書き込んだ。

   「昨晩は、ポーランド大統領機墜落、緊迫するタイ情勢などへの対応に追われました。『カチンの森事件』の追悼式典への大統領の強い思いが、この悲劇につながったのでしょうか。あらためて、ポーランド大統領をはじめ亡くなられた方々に追悼の意を表したいと思います」

   発言は、「気象条件が悪い中で、着陸した背景には式典への大統領の強い思いがあった」と読めないことはないが、全く別な受け止め方もあるようだ。

「陰謀論が出てきそうな受け取り方になってしまう」

   ツイッター上では、猛烈な勢いでリツイート(引用)されているほか、発言の意味が不明瞭なだけに、

「なんか陰謀論が出てきそうな受け取り方になってしまう」
「何を言っているのか意味が分からない」
「ポーランド大統領に非があるととられかねない発言」
「この部分だけが訳されて世界に広がってしまわないことを願います」
「悲劇を呼び込んだっていってる?」

などと様々な憶測が広がっている。

   カチンの森事件は、ポーランド人の反ロシア感情の源とも言える事件だ。ロシア側は事件を「犯罪」だったと表明しているものの、今でも両国のわだかまりは消えてはいない。そうした歴史的経緯があるだけに、今回の事件で「ロシア陰謀論」もささやかれ、現地は大騒ぎだ。それだけに発言は慎重であるべきだった。

   それ以外にも、批判を呼びそうな要素がある。4月10日夜には、タイではロイターのカメラマン、村本博之さんが武力衝突に巻き込まれて死亡した。ところが、ツイッターの発言では「緊迫するタイ情勢」の8文字で片付けられている。実際、橋本大二郎・前高知県知事(NHK出身)も、ツイッター上で

「自国のジャーナリストの死にも、触れてほしかったなあ」

   と、違和感を表明している。

   鳩山首相のツイッターのアカウントは、現時点で、約48万人にフォロー(登録)されており、ツイッター利用者の中でも影響力が大きい。また、文章は自分自身が書いていることを明らかにしている。

   鳩山首相の最後の発言は、4月12日9時56分の

「オバマ大統領が提唱し、核によるテロを防ぐことを目指した核セキュリティ・サミットに出席するため、これからワシントンに出発します。1泊3日の弾丸出張です。『核兵器のない世界』へ向け全力を尽くします」

   というもの。同日午前のぶら下がり取材でも、ツイッターの発言の真意について言及せず、昼過ぎには羽田空港から政府専用機でワシントンに向かった。