高橋洋一の民主党ウォッチ
「役人はハローワーク行け」消えた 口先だけだった民主党

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   「国家公務員法改正案」について、2010年4月6日の衆議院本会議で審議スタートした。当初は、「政治主導確立法案」が先に審議されるとみられていたが、セットで審議されるべき「国会審議活性化法案」が出遅れ、「国家公務員法改正案」が先行することになった。審議入りの前日、自民党・みんなの党の共同提案で対案が提出され、今国会初の本格的な論戦となっている。

   それにしても目立つのは、「かつての民主党の主張」と「今回の鳩山内閣の法案」との乖離だ。

   例えば、官民人材交流センターの扱いだ。それは、各府省が独自で行っていた天下りあっせんを禁止する代わりに、官民人材交流センターで再就職あっせんを行うという仕組みだった。これに対して、かつて民主党は、官民人材交流センターは役人のための天下りバンク、特別の豪華版ハローワークだといい、役人はハローワークへ行けといった。

失業保険と無縁の「優雅」な余生

   私は、3年前官邸で渡辺喜美行革相(当時)のお手伝いをして、国家公務員法の改正を行い、官民人材交流センターを設立した側にいた。民主党が主張していた「役人はハローワークに行け」というアイディアは正直いって魅力的だった。自分なりに、そのアイディアを取り入れた案を考えたが、そこまでに達する前に、各府省が独自で行っていた天下りあっせんを禁止することに対し官僚側の抵抗がとても強烈で、まず天下りあっせん禁止規定を法律に盛りことを最優先し、官民人材交流センターを設置することで官僚側と妥協したのが真相だ。それだからこそ、民主党が、かつて「役人はハローワークに行け」と豪語していたので、どのような改革案を作るかについて、おおいに関心があった。

   ところが、今回の民主党の法案を見ると、「官民人材交流センター」は、名称を「民間人材登用・再就職適正化センター」と改称し、解雇に当たる「分限免職」時のみに再就職あっせんするとのことである。では、ほかのケースはどうなるのか。まだ不明な点が多いが、おそらく、従来の天下りといわれていたものでも、天下りでないとか言い訳をしながら、結局、実質的に野放しになったり、逆に「合法化」されて従来より悪くなったりするおそれもある。この点は機会を改めて論じたいが、あの威勢のよかった「役人はハローワークに行け」はどうなったのか。

   そもそも、役人にハローワークに行かせることはなかなか難しい。多くの人がハローワークに行くのは、就職情報のためだけでなく、失業保険の給付がもらえるからだ。ところが、公務員は雇用保険に加入していない。国は民間会社のように倒産しないというのが前提なのだ。おまけに、解雇に当たる分限免職はまずないのだから、雇用保険に入る理由がますますない。天下り・渡りで優雅な余生を送る役人はほとんどハローワークに行くことは想定されていない。

「自民・みんな」は「センター」廃止のサンセット方式

   こうした実態があるため、役人をハローワークに行かせるために、第1に考えられるのが、役人を雇用保険に加入させることだ。しかし、ほとんど失職の可能性のない役人に、今の雇用保険料の負担を強いることはできない。となると、失職のおそれの少ない役人に対しては雇用保険料を安くして雇用保険に加入させることが考えられる。第2の考えは、「民間人材登用・再就職適正化センター」を将来のある時期を決めて廃止するようにして(サンセット方式)、同時に役人のままで居残ると給料が低くなるという仕組みを導入するのだ。これは一見残酷なように見えるが、実は今の年功序列の賃金体系を改めることで可能だ。

   ところが、民主党の法案は、どちらでもない。結局、かつて「役人はハローワークに行け」と激しく言ったものの、それを実行できるような法案になっていない。やはり、支持団体に労働組合を抱える民主党ではできないのかもしれない。

   一方、自民党・みんなの党の共同提案では、サンセット方式になっており、こちらのほうがはるかに「役人はハローワークに行け」という案になっている。

   政権与党は、予算と法案だけでそのパフォーマンスを評価できる。どんなに口で立派なことをいっても、できた予算や法案がダメなら、政権与党もダメだ。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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