高橋洋一の民主党ウォッチ
量的緩和なぜやらない 日銀の「本業」とは何か

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   一般にノーベル経済学賞といわれるが、正式名はアルフレッド・ノーベル記念経済学スウェーデン国立銀行賞という。残念ながら日本人の受賞者はまだいない。授賞式などは他のノーベル賞と同じように行われているが、ノーベルが遺贈したものではなく、スウェーデン国立銀行が設立した賞である。

   スウェーデン国立銀行はスウェーデンの中央銀行で、日本の日銀に相当する。世界最初の中央銀行として知られ、1931年にスウェーデンを襲った危機に対して、インフレ目標を導入し、大恐慌からいち早く抜け出たことで有名である。そうした歴史と伝統であろうか、国民は経済学を信頼しており、ノーベル経済学賞の創設にもつながっている。ちなみに、今ユーロ圏はギリシャ問題に苦悩している。ユーロ圏の国は、共通通貨で広い市場を享受できるが、一方で金融政策を失うことにもなる。こうした事情から、スウェーデンは、イギリス、デンマークなどとともにまだユーロ圏に参加していない。

経済学を学んでいる学生ならおなじみの計算式

   そのスウェーデンもリーマンショックに見舞われた。スウェーデン国立銀行は、消費者物価指数で年率2%プラスマイナス1%のインフレ目標をとっていた。ホームページには、温度計でインフレ率が示されており、1%以下は「寒い」青色ゾーン、3%以上は「暑い」赤色ゾーンになっている。スウェーデンの消費者物価指数は、リーマンショック以降急速に低下し青色ゾーンになり、2009年4月から11月までにマイナスにまでなった。しかし、リーマンショック以降、スウェーデン国立銀行は、ただちに非伝統的金融政策(ゼロ金利と量的緩和)に踏み切った。バランスシートの規模をそれ以前の3倍以上にした。そして、10年2月、1.2%とインフレ目標の範囲に戻り、今でも維持されている。

   当時、スウェーデン国立銀行のステファン・イングブス総裁が行った説明はとても簡単だ。彼は、

貨幣数量式 M(貨幣ストック)× V(流通速度)=P(価格)× Y(生産量)

を描いた。これは、大学で経済学を学んでいる学生であればおなじみのはずだ。

   そして、非伝統的金融政策の効果は、いろいろな人がいろいろ言うが、この式の通りでいい。危機になると、流通速度は小さくなる。それでも、価格が下がらないように、また生産も下がらないようにするためには、貨幣ストックを増やすしかない。ノーベル経済学賞のスポンサーの中央銀行の総裁が学生のような説明をするのかと、私はとても驚いた。彼の説明はそれと、「海外の中央銀行もやっているからやろう」だけだった。

   かつて、日本でも、このような説明をした経済学者がいたが、多くの学者から、そのような単純な貨幣数量説(英語では貨幣数量「理論」quantity theory of moneyだが、なぜか日本語では「説」と訳す)を信じているのかと冷や水を浴びせられた。

量的緩和はマクロ経済効果がない。が日本の定説

   そして、今では、量的緩和はマクロ経済効果がないというのが、日本での定説だ。それは、日本銀行の白川総裁が公言しており、日本のほとんどの経済学者はそれを受け入れているかのようだ。そして、ほとんどの金融関係者は、「日銀は一生懸命金融緩和したのにデフレは脱却できなかったのだから、量的緩和は効果がない。他の構造問題に取り組むべきだ」という。

   この意見は本当か。イングブス総裁が言及していた米、英、そして日本を加えてデータを見てみよう。リーマンショックのような世界に同じショックがあると、あたかも社会実験のような環境ができ、各国の政策対応の差が経済パフォーマンスの差になるので、政策効果が計測できる。データを見ると、量的緩和をやらない日本の物価(予想)の戻りは各国より遅い。この事実から、各国の量的緩和の効果が計量的にわかる。技術上の話を省くが、ほぼ同額比較のイメージで、日銀は10兆円拡大で0.15%、米国のFRBは1000億ドル拡大で0.09%、英国のイングランド銀行は1000億ポンド拡大で0.5%、それぞれ物価(予想)を押し上げることができる計算になる。

   さすがノーベル賞のスポンサーになる中央銀行の総裁の言うことは違う。一方、日銀は量的緩和という本業をやらずに、経済成長を促すための新貸出制度と称して政策金融のまねごとをやって、国民の目をそらそうとしているのではないか。それに騙されるマスコミも情けない。


++ 高橋洋一プロフィール
高橋洋一(たかはし よういち) 元内閣参事官、現「政策工房」会長
1955年生まれ。80年に大蔵省に入省、2006年からは内閣参事官も務めた。07年、いわゆる「埋蔵金」を指摘し注目された。08年に退官。現嘉悦大学教授。著書に「さらば財務省!」、「日本は財政危機ではない!」、「恐慌は日本の大チャンス」(いずれも講談社)など。


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