「ユーロ危機」折見 世記氏に聞く
ギリシャ、スペイン、ポルトガル… 欧州財政危機「第二のリーマン」か?

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   ニューヨークやロンドン、上海、そして東京と世界中の株式市場が混乱している。外国為替市場でも欧州連合(EU)の統一通貨「ユーロ」が急落。米ドルも連れて下落し、押し出されるように円が上昇した。きっかけはギリシャやスペインの財政危機だ。ユーロは、EUは大丈夫なのだろうか。

   リーマン・ショックと同様の、世界的な金融危機につながるのだろうか。三菱UFJモルガン・スタンレー証券投資情報部の折見世記・シニア投資ストラテジストに聞いた。

ギリシャ支援にドイツが悲鳴

折見氏は「欧州危機が中国に波及しなければいいが」と心配する。
折見氏は「欧州危機が中国に波及しなければいいが」と心配する。

―― ギリシャの財政危機をきっかけに、EUが揺れています。なぜこのような事態になったのでしょうか。

折見 簡単に言えば、ギリシャは国も家計も借金まみれだったということです。実質金利が低く景気が過熱していたところに、一転、リーマン・ショックによる世界的な景気悪化で、政府がそこから脱出するために財政拡大を行ったためです。つまり、国債の増発です。
   国債は本来であれば家計にとっても負担なのですが、国に信用力さえあれば、表面化しません。ギリシャは公務員が多い国ですし、教育費の無償制度などの財源になりますから、国民にとって、それはそれで家計が潤うことにもなります。
   しかし、一方でギリシャの国家債務はGDPの113%にも達しています。そこに米格付け会社が国債の格下げを発表した。誰もがうすうす感じていたギリシャ国債への不安が、それによって顕在化したのです。 家計にしても、安い金利で調達した資金でドイツやオランダの品質の良い製品を買いまくりました。ドイツなどにとってはモノが売れて経常黒字に貢献するのですから、そんなに悪いことでもなかった。統一通貨ユーロの陰で、こうした状況が見えにくくなっていたことがあります。

―― 最大7500億ユーロの緊急融資制度の創設や公社債の買い取りなど、IMF(国際通貨基金)やECB(欧州中央銀行)が支援に乗り出しました。

折見 しかし、これで一件落着というわけにはいきません。財務体質の弱いPIGS(ポルトガル、アイルランド、ギリシャ、スペイン)諸国は年間1000億ユーロにのぼる債務の返済を、2010年を含め少なくとも5年間は払っていくことになります。2011年には1300億ユーロ、直近でも、7月にはこの4か国がけで360億ユーロを返済しなければなりません。「本当に実行できるのか」という懸念があります。
   財政危機が広がらないように、急ぎ債務条件の変更など(債務再編)への法整備が必要になります。いま、万一債務条件が変更されれば、泣くのは出資者です。IMFやECBが支援した国の財政再建が後退することになれば、ECBそのものへの不信感が増し、それによってユーロの価値も一段と低下します。

スペインが深刻 不動産バブル崩壊?

―― ギリシャ国民が政府の財政圧縮策に反対して死者が出る騒ぎになっている一方で、ギリシャを支援する立場にあるドイツ国民もまた不満が募っています。

折見 公務員の削減など、ギリシャの財政再建が軌道に乗るには時間がかかるでしょう。前出のPIGS支援には4000億ユーロ規模の融資を、EU内で資金調達する計画です。経常黒字が多いドイツが主に支援に応じることになりますが、ドイツも資金が潤沢にある状況ではありません。ドイツ国民には、なぜギリシャなどの借金を肩代わりしなければならないのか。そんな不満がくすぶっています。実際、5月に行われたドイツの州議会選挙では、メルケル首相率いる連立与党は予想外の敗北を喫しました。
   フランスも経常収支は赤字ですし、財政赤字の対GDP比はPIGS並みに厳しい状況にあります。ただ、ギリシャ国債などを多く買っていたのがドイツやフランスなどの他のEU諸国の銀行だったわけですから、南欧のソブリン問題を放置しておくわけにもいきません。

―― 事態はスペインで深刻化しそうな兆しがあります。

折見 「PIGS」といわれる国の中で、特にスペインに注意が必要なんです。まず、経常収支はマイナス。それに、スペインの銀行はポルトガルの国債をたくさん買っています。つまり、ポルトガルが財政危機に陥るとスペインも危うくなって、玉突きのように問題が欧州に一気に広がる懸念があるわけです。
   スペインはギリシャやポルトガルに比べると財政やGDPの規模も大きく、それだけ影響があるのです。それにスペイン自体の住宅バブルの影響も心配です。家計の借金が返せず、消費も低迷します。最近、デフレの兆しが現れてきたのが気になるところです。
   そもそも、スペインの不動産バブルは低金利の日本円で調達して得た資金も一因ですから、日本も多少は関わっている。デフレ基調のなかでの緊縮財政という、スペイン政府はきわめて難しい舵取りを強いられることになります。

―― それはスペインの財政危機が、日本の大手銀行にも影響するということですか。

折見 スペインが金利の低い日本円で資金を調達していたのは日本で営業する外国銀行が中心だったとみられています。したがって、日本の銀行の影響は軽微でしょう。それに、彼らはすでに資金を圧縮しています。問題はスペイン国内の貯蓄銀行です。貸倒れの増加や不動産バブルの影響で経営が悪化しています。

――スペイン、イタリア、さらにフランスと「ドミノ倒し」になると大変ですね。

折見 ギリシャやスペインの国債を多く保有しているのはドイツやフランスの銀行です。また、「PIGS」向けの外銀全体の融資残高は2兆5350億ドルありますが、このうちEU諸国の銀行だけで1兆9150億ドル(75.5%)を占めています。つまり、どこがデフォルトを起こしても、EU内の別の国が影響を受けて、連鎖的に金融危機を起こす可能性が高まるというわけです。
   EUの統一通貨ユーロは、その前提ができるだけ経済情勢をあわせることで維持していたのですから、表面上はお互いが債務を持ちあって、支えあっていたわけです。しかし、その一角が危機的状況に陥ったため、次々に不安が広がってしまった。いまでは各国が疑心暗鬼になってしまったともいえます。

中国の景気悪化は日本への影響大

―― こうした欧州の混乱は、日本経済へどのような影響を与えますか。

折見 日本にとっては、EUへの輸出が減ると言った直接的な影響以上に、中国経由の間接的な波及が心配です。EUの経済活動が低下し中国経済が影響を受ける。これがこわい。中国頼みの日本の景気はてき面に悪化します。たとえば、中国向けに輸出が伸びている工作機械などは打撃を受けるでしょう。
   さらに、中国の不動産バブルの崩壊が懸念されます。中国はいま、ホットマネーが流れ込んでいて、上海や深センなどの沿岸部から内陸部でもビルやマンションの建設ラッシュの要因になっています。しかし、これらは投機目的といえるものもありそうです。住宅需要があっても、価格面ではすでに人々の手に届かないものも増えてきました。そうなると不動産価格が下落して、投資資金が回収不能になる危険性が高まります。 欧州発の財政危機→世界中の投資家が安全志向を高める→ホットマネーが中国から流出→中国の不動産バブルの崩壊、という流れも懸念されます。

―― 先般エストニアがユーロ圏への加盟を決めたように、これまでEU加盟国は拡大の一途をたどってきました。それがギリシャ問題で風向きが変わったように思えます。どのように見ていますか。

折見 たしかに、これまで通りというわけには行かなくなったといえます。しかし、ユーロ体制が崩れるか、といえばそうではないでしょう。
   キーワードは「財政規律」です。ユーロ圏の中で早急に財政規律を守るためのチェック機能の強化やペナルティーの課し方をまとめるべきです。ユーロ圏にとどまるのであれば、財政状況は正確かつオープンにすべきです。それによって、なかなか資金調達できなくなる国もあるかもしれませんが、財政規律が守れない国は離脱する覚悟が必要ですし、それでもユーロに入りたいという国には加盟を認めるという、そのくらいの厳しさが必要でしょう。また、ハードルは高いでしょうが、ユーロ政府債の共同発行も検討すべきと思います。ギリシャがユーロ圏から離脱するかどうかは、最後の判断になります。

(プロフィール)
(おりみ せいき)
1986年神戸大卒、第一證券に入社。国際部、ロンドン現地法人駐在を経て、リサーチセンターに配属。2000年つばさ証券、02年UFJつばさ証券で投資情報部チーフ・ストラテジスト、05年三菱UFJ証券で投資情報部シニア投資ストラテジスト。10年5月から現職。
日経CNBCなどの番組に出演するほか、「週刊エコノミスト」や「ユーロマネー」などに執筆。日本証券業協会証券教育広報センター、東京IPO、株式新聞社主催セミナーなどの講師も務める。

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