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三洋電機「お米からパン」焼き機開発 食糧自給率向上に期待かかる

   三洋電機が「家庭にあるお米でパンを作ろう」をキャッチフレーズに「世界初」のホームベーカリー(家庭用パン焼き機)を開発した。名前は「GOPAN(ゴパン)」で、文字通り、ご飯のように手軽にパンが焼ける革命的な商品だ。

   研究・開発に7年を費やしたという。米からパンを焼く機械など一見簡単なようだが、乗り越えるべきハードルが高く、どのライバルメーカーも実用化できなかった。

家庭の常備米をそのまま使えるように工夫

   ハードルのひとつは米の硬さだった。「米は硬度が高いため、粉状に粉砕するには大規模な機器と設備が必要で、商品化には至らなかった」というのだ。三洋は「炊飯時のように米を粒の状態で水に漬けて柔らかくしてからミルにかけるという、これまでの常識を覆した『米ペースト製法』を開発」することで、実用化にこぎ着けた。

   米からパンをつくる順序は簡単だ。まず洗米した米と水、塩、砂糖、ショートニングをパンケースに入れ、最後にグルテンとドライイーストを本体上部の自動投入ケースにセットし、スタートボタンを押すだけという。約4時間後には、米パン1斤がふっくらと焼きあがるというわけだ。

   もちろん、これまでも米粉を利用して家庭でパンを焼くことは可能だった。しかし、米粉は流通量が少なく、値段が割高なのがもう一つのハードルとなり、ほとんど一般家庭には普及していなかった。このため三洋は、家庭に常備している米をそのまま使えるようにすれば、課題が一挙に解決し、米粉パンが普及すると考えた。

   その意味で、「世界初」なのは三洋が「全自動お米ミル機能」と名付けた粉砕機の技術といえる。米をそのままミルにかければ、硬くてうるさいが、水につけることで柔らかくなり、音も静かになるという、コロンブスの卵ながら、まさに一石二鳥のアイデアだ。

消費者の米の潜在需要を掘り起こす?

   三洋の佐野精一郎社長は

「GOPANの販売で国内の食糧自給率を高めたい。そのためには政府との連携も強化したい」

と意気込む。農林水産省によると、国内の米の1人当たりの年間消費量は1962年の118キロがピークで、2008年は59キロと半減している。食糧自給率で見ると、76%から41%に低下している。政府はこの41%を50%に引き上げることを目標としており、そのためには、輸入品が大半を占める小麦の消費を抑え、ほぼ100%国産の米を増やすことは大きな効果がある。三洋はGOPANの普及が「消費者の米の潜在需要を掘り起こす」とみている。「これまでご飯になるのが当たり前だったお米から、手軽にパンを作ることが可能になった」からだ。

   三洋のGOPANについては、農水省の佐々木隆博政務官が「米の新しい消費の仕方を提案するもので、食糧自給率の向上の観点からも大いに期待する」などと異例のコメントを寄せている。三洋が政府と連携したプロモーションを行っている点も見逃せない。

   GOPANの発売は10月8日。市場想定価格は5万円前後。米で作ったパンはモチモチの食感で、小麦粉アレルギーの人も食べられるメリットもある。パン1斤当たりの材料費は市販の米粉の336円に対して、米は148円、小麦は124円という。ホームベーカリーとしては割高なGOPANを買い得と感じるかどうか。消費者の反応が気になるところだ。