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FXレバレッジ規制が「円高を後押し」?

   急速な円高が進行中だ。2010年8月4日の外国為替市場は一時、1ドル85円台半ばまで上昇した。同日18時の時点でも1ドル85円43銭を付けている。

   この円高に、外国為替証拠金(FX)取引にこの1日から導入された証拠金倍率(レバレッジ)規制が関係しているとの指摘がある。規制によって個人投資家が取引を控え、「外貨買い」が減ったためだという。

「くりっく365」の取引が8月に入って減少

   FXの規制は、金融庁が投資家保護を目的に、これまで最高400倍だったレバレッジを段階的に、2010年8月から50倍、11年には25倍に引き下げるというもの。その影響なのか、東京金融取引所の「くりっく365」の取引が8月に入って減っている。

   8月3日の売買高は、7月30日に比べて36.7%減の29万4793枚(1枚は1万通貨単位)だった。通貨別では豪ドル・円取引が47.9%減の8万7665枚、米ドル・円取引が14.6%減の10万9085枚、ユーロ・円取引は52.0%減の4万579枚だった。なかでも、豪ドル・円取引は豪州の高金利が注目され、このところ活発な取引が続いていた。

   同取引所によると、7月の平均売買高は約40万枚。「8月2日が約26万枚、3日が29万枚と数字のうえでは減っていますが、まだ2日間なのでそれがレバレッジ規制の影響かどうかは正直まだわかりません」と話す。「このあと(8月6日)、米国の失業率の発表があって、様子見の投資家も少なくないはず」とみている。

   ある市場関係者は、「いまの円高はダラダラと上がっていく感じ。FX取引が大きく動くときは急騰、急落のときなので、85円台といってもインパクトがない」と、規制強化の影響を除いても、売買高が増えるような動きにはなっていないという。

中国の日本国債買いが円高要因に

   いまの円高の原因は、「諸外国が外貨準備通貨として円の保有を増やしているため。とくに中国は、米ドルやユーロの下落リスクをヘッジするため、かなりの勢いで日本国債を買っています」と、NTTスマートトレード市場情報部・工藤隆部長は話す。7月の参院選で菅首相が消費税の増税を口にしたことで、安全資産としての日本国債への注目度がさらに増したこともある。

   季節要因もある。8月は夏季休暇のため、輸出企業を中心に駆け込みで「円買い」を銀行に発注することが多い。そのため、円高にふれやすいのだ。

   レバレッジ規制の強化について、あるFX関係者は「影響は小さくない」と話す。レバレッジ規制も「円高を後押しした要因の一つ」と指摘。「本来、レバレッジが低く、外貨を長期で保有する傾向にある個人投資家までが規制の強化を意識して円を買い戻している。それを見越して、投機筋が短期的な円買いを持ち込むといった流れができ上がってしまった」と説明する。

   そこに米国景気の回復の遅れが伝わり、さらに米ドル売り・円買いが進んだということらしい。