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経団連「復活」をアピール 民主、自民の橋渡し役狙う

   日本経団連と民主党は2010年8月5日、東京都内のホテルで政策対話の懇談会を開いた。鳩山由紀夫前政権下では、経団連と自民党を一体視する小沢一郎前幹事長の影響で政策対話が一度も行われず、09年9月の政権交代後、初めて。

   最近の経団連と民主党の接近を象徴するものだが、具体的な政策への深入りは双方とも避けている。自民党を中心とする政権の時のような政策協議の復活までは、現時点では見通せていない。

米倉会長は野党時代から菅直人氏と定期的に会合

   「我々の考えていることと、民主党の政策はかなりの点で合致することが理解できた。有意義な意見交換だった」。懇談会後、米倉弘昌経団連会長は記者団に「成果」をこう強調した。米倉会長は非公開だった懇談会で「民主党政権による政策が最大限成果を発揮するように支援していきたい」と発言したことも明かし、「蜜月ぶり」も演出してみせた。経団連内では「民主党との関係を短期間でここまで修復できるとは信じられない」(幹部)とも受け止められている。

   転機は何と言っても菅直人政権と米倉新会長の誕生という両トップの交代だ。小沢氏の経団連嫌いもあり、消費者重視を標ぼうする鳩山政権は、御手洗冨士夫前会長時代の経団連と距離を置いたが、菅政権は政策の看板を「強い経済、財政、社会保障」に掛け替えた。

   この路線自体が、経済成長戦略と税財政、社会保障改革を訴える経団連の主張に重なる。御手洗氏はキヤノンの偽装請負問題で民主党現幹事長の枝野幸男氏らに批判を浴びた経緯があるが、米倉氏は野党時代から菅直人氏と定期的な会合を持つなど、他の財界人よりは民主党に近い。

今回の対話では具体的な協議はできず

   菅政権が6月に閣議決定した新成長戦略は法人税を先進国並みに引き下げることを盛り込んだが、民主党も参院選のマニフェストでも「強い経済」に向けて経団連の悲願である、法人税減税を掲げた。民主党としてもいつまでも財界と距離を置いておられず、協力して成長戦略を実行に移したいという思いもあったとされる。

   ところが、参院選の民主大敗が雲行きを危うくし始めている。

   菅首相は参院選での消費税発言を「唐突だった」と反省し、税財政一体改革のムードがしぼんでいるのは誰の目にも明らか。また、地球温暖化問題など歩み寄りが難しい課題については、代表選での再選の見通しもつかず足元がぐらつく今の菅政権には、話し合いを始める気力もない。このため、今回の政策対話では具体的な協議はできず「消費税も法人税も話をしていない」(米倉会長)のが実情だ。

   ただ、経団連は野党第1党の自民党とも9月初めにも政策対話を再開し、「ねじれ国会」克服に向け、「責任ある野党」として税制改革などを超党派で進めるよう求める方針だ。民主、自民の橋渡し役を狙ったもので、経団連としては過去1年で失った存在感を一気に高めたい考え。民主党代表選など不安定な要素も多いが、成果が注目される。