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マツダは次どこと手を組むのか トヨタ?パナソニック?中国企業?

   米フォード・モーターがマツダの株式の大半を売却する方針を固めたことが明らかになった。1979年に25%出資して以来、資本関係を持ち続け、保有比率は現在11%だが、3%程度にまで引き下げ、筆頭株主の座を降りる。

   三井住友銀行や住友商事など住友グループ、さらに部品企業などが1%程度ずつ引き取る見込みで、早ければ年内の合意を目指す。

独自技術による「エコカー」展開で勝負

   フォードの後ろ盾を失うマツダは「あくまでフォードとの戦略的互恵関係に変わりない」(山内孝社長)と強調するものの、既に独立路線を走り始めてもいる。住友グループがいつまで持ち続けるかどうかも予断を許さず、マツダの動向に注目が集まる。

   2010年10月20日、マツダは東京都内で開いた会見で「ガソリン1リットル当たりの燃費性能が30キロ」の新たなガソリンエンジン「スカイアクティブ」を開発した、と発表した。2011年前半に改良するデミオに搭載し、その後の改良車にも順次採用。10月に発売されたホンダのフィット・ハイブリッド(HV)の燃費が30キロであるだけに、マツダが「HV並みのガソリン車でエコカー市場に参入」と胸を張るのも当然だろう。

   欧州向けにディーゼル車用スカイアクティブも開発済みで、2015年度までに世界で販売する新車の8割を新エンジン車とする方針。マツダ自身は否定するが、この独自技術による「エコカー」の展開こそ、「脱フォード」戦略の柱に他ならない。

   96~2003年までは、フォードがマツダに社長を派遣するほどの関係になったが、リーマン・ショックで経営悪化したフォードがマツダ株を売却する一方、マツダが1000億円の公募増資に踏み切ったことで、既に独立路線にカジを切っていた。今年3月にはトヨタ自動車からHV技術供与を受けることで合意し、2013年にHV車を発売する計画も表明済みだ。

中国企業の名前が挙がるのも自然な流れ?

   では「独立」の後、トヨタ傘下に入る可能性はどうか。トヨタは「HV仲間」を増やすため、これまでも日産自動車をはじめ幅広くHV技術を供与しており、マツダがトヨタからHV技術供与を受けることをもってトヨタ傘下に入る布石と見る向きは少ない。トヨタにとってマツダは、欧州市場が得意という点では魅力かもしれないが、リーマンショックと大規模リコール、最近では空前の円高という相次ぐ苦難に見舞われており、とてもマツダ買収に動く体力がないのも事実だ。

   住友つながりで、三洋電機を丸のみしたパナソニックがこの際マツダも、という説がまことしやかに語られもする。確かに、リチウムイオン電池世界首位の三洋の技術と生産力があれば、本格的なエコカー時代が到来する自動車産業に参入するのも夢物語とは言えまい。

   しかし、パナソニックも三洋とパナソニック電工の完全子会社化に向け、2009年来のTOB(株式の公開買い付け)などで投じる資金の総計は1兆円を超える。リーマン・ショックからの病み上がりの体でもあり、「(マツダ買収というような)余裕あらへん」(パナソニック幹部)というのが本音のようだ。

   となれば先進国に選択肢はあまり残されておらず、中国企業の名前が挙がるのも自然な流れか。実際、フォード傘下だったスウェーデンの高級車ブランド「ボルボ」は中国の吉利汽車が2010年8月に買収したばかり。当面は中国が世界市場の主役であり続けるだけに、現実的な選択肢と見る向きもある。