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家電量販店「わが世の春」いつまで エコポイント後やってくる大変事態

   家電量販店ダントツ1位、ヤマダ電機の2010年9月中間連結決算は、売上高が前年同期比8.2%増の1兆137億円と、家電量販店の中間決算として初めて1兆円の大台に乗せた。政府のエコポイント制度や猛暑効果の後押しを受けたもので、ヤマダに比べると売上高の規模は半分以下になるが、2位以下のエディオン、ケーズホールディングス、ビックカメラなども軒並み好調だ。

   だが、エコポイント制度終了後の反動減などで「わが世の春も、いつまで謳歌していられるか」(業界筋)と各社は気を引き締める。薄型テレビに代わる柱の育成、ポイント戦略見直し、海外展開など各社それぞれに模索するが、体力勝負が一段と強まるのは必至と見られ、業界の更なる再編の可能性がささやかれる。

電気自動車販売に注目が集まる

   2010年11月4日に発表したヤマダの中間決算は、本業のもうけを示す営業利益は前年同期比87.5%増の470億円と過去最高を更新、最終(当期)利益は72.7%増の282億円だった。猛暑とエコポイントのダブル効果でエアコンの売上高が35.5%増えたほか、冷蔵庫も16.7%増加。

   売り上げ全体の2割を占める主力の薄型テレビは価格低下もあって4%増にとどまったが、12月からエコポイントが半減するのを前に足元の駆け込み需要は好調。岡本潤専務は、テレビの堅調な需要が「地上デジタル放送移行(2011年7月)まで続く」と語った。11年3月期業績予想も売上高、営業利益とも過去最高を見込んでいる。

   他社では、ケーズも売上高は19・1%増の3567億円、営業利益は97・7%増の155億円、最終利益は64・8%増の99億円といずれも過去最高を更新した。

   問題は、エコポイント終了後。薄型テレビ需要の反動減が見込まれるため、各社、戦略を見直し始めている。

   品ぞろえの面では電気自動車(EV)注目が集まる。ビックカメラは11月9日から三菱自動車と組んでEV「アイ・ミーブ」の販売取り次ぎを開始。ヤマダもアイ・ミーブ取り扱い開始に向け交渉しているという。自動車大手が家電量販店ルートで新車販売するのは初めて。ヤマダは既に中古車販売にも乗り出しており、「EVは家電だと思っている」(岡本専務)と意欲を隠さない。太陽電池も今後の拡大が見込めるとして、ヤマダが中国サンテックパワーと組んで昨年から販売を始めているほか、エディオンが戸建て住宅のリフォーム事業の一環として乗り出した。

ポイント額を前期の半分以下に抑える

   「ポイント還元」の見直しも進む。従来から「現金値引き派」のケーズ以外の大手は、顧客を囲い込む狙いもありポイント付与競争を激化させてきたが、今年に入って転換しつつある。ヤマダは4月から、客がポイント還元か現金値引きかを選べる方式を導入済み。

   例えば購入時に5%の現金値引きかポイント10%還元かを選べるようにした。これにより11年3月期のポイント額を前期の半分以下に抑える方針だ。コジマもポイント還元率を低くして今年度のポイント額を同様に2~3割減らす。店頭価格を下げて、来店意欲を促す狙いというが、将来、会計基準が厳しくなれば、ポイントの引当金の積み増しを求められる可能性があることも、ポイントを減らす一因のようだ。

   また、他の小売業種に比べ遅れの目立つ海外展開も本格化。ヤマダは11月中に中国・瀋陽に1号店をオープンさせ、今後3年間で5店を中国で開店する計画。エディオンなども中国への出店を検討するなど、大手各社とも海外展開に意欲を見せる。

   いずれにせよ、こうした取り組みは体力勝負だけに、業績格差が拡大すれば、さらなる業界再編の可能性もある。