2024年 4月 19日 (金)

「海上保安官守れ」と嘆願の動き 守秘義務違反で起訴できるのか

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   尖閣ビデオ問題で警視庁の取り調べを受けている神戸海保の海上保安官(43)について、起訴しないよう嘆願する動きがネット上で出ている。国会議員が見られたものを守秘義務違反に問えるのか、専門家でも意見が分かれている。

   「自分がやりました」。巡視艇「うらなみ」で主任航海士を務める海上保安官がユーチューブ投稿を告白し、国家公務員法違反の疑いで逮捕へと2010年11月10日に一斉に報じられた。

ネット調査「処罰すべきでない」84%

処罰否定が圧倒的だが…
処罰否定が圧倒的だが…

   しかし、警視庁が事情聴取を始めて丸一日が経っても、逮捕のニュースは届いていない。捜査は、その違法性を巡って難しい判断を強いられているようなのだ。

   ネット上では、この保安官を英雄視する声も多く、逮捕や起訴への疑問が相次いでいる。

   ヤフーの意識調査では、尖閣ビデオの流出について、「歓迎する」「やむをえない」が11日夕時点で、86%も占めている。「問題だ」は、わずか14%。また、ライブドアが処罰すべきかネットリサーチをしたところ、「すべき」16%に対し、「すべきでない」が84%にも達した。サイトによっては、もっと極端に無罪の意見が多いところもある。

   保安官の不起訴などを求める嘆願の動きも出ており、2ちゃんねるでは、そのテンプレートが複数出回っているほどだ。署名サイト「署名TV」では、「国民感情を考慮し、釈放される事を望みます」とする菅直人首相への減刑嘆願が11日夕までに2000ほども集まった。

   こうした嘆願の根拠になっているのが、国家公務員法違反の罪に問われた税務署職員に対する1977年12月19日の最高裁判例だ。

   そこでは、違法性を問える場合を、情報が公になっていないこと、実質的な秘密として保護すべきであることの2点に限定している。

略式起訴・罰金刑で失職なしの可能性

   海上保安官の場合、国会議員への公開内容が報じられており、中国人船長はすでに釈放されて証拠価値が薄れていることなどから、ビデオ投稿の違法性に疑問が出ているのだ。

   日本大学の板倉宏名誉教授(刑法)は、今回のことについては、専門家の間でも見解が分かれており、相当難しい問題だと考えていることを明らかにした。

「国会議員に公開し、議員がマスコミに説明しており、ビデオはもう保護する必要はなくなったとの見方もできます。保安官は沖縄ではなく神戸におり、国会公務員法の『職務上知りえた』情報になるのかについても、問題になる可能性があるでしょう。公益に当たるときは、罪に問えないという考え方もできます」

   そのうえで、板倉氏は、当局が保安官の逮捕や起訴に乗り出さざるをえないかもしれないと言う。

「ビデオ流出で分かった衝突の具体的な内容まで、一般に知られているとは言えません。当局は、外に出すと様々な影響をもたらすとして、秘密にしたいと考えられます。海保が被疑者を刑事告発しており、ビデオを保護する必要がなくなったとは言いにくいのでしょうからね。起訴猶予処分ということも考えられますが、これだけ表立った問題になると刑事責任を無視できないでしょう」

   具体的には、国家公務員法違反の罪なら、検察が保安官を略式起訴し、50万円以下の罰金刑になる可能性を挙げている。

   ただし、公務員の場合、執行猶予付きでも懲役刑になると失職するものの、罰金刑なら失職はないという。

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