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経営者やアスリートに信奉者 伝説の雀鬼・桜井章一「本」ブーム

   麻雀界で「20年間無敗の男」「一晩で役満を10種類あがる」「卓上に伏せている牌を次々と当てる」など、一流のプロが「超能力者」と呼び、「伝説の雀鬼」として信奉者も多い桜井章一氏の「本」が人気だ。「そんなこと、気にするな」(廣済堂新書)や「『頑張らない』から上手くいく」(講談社)、「桜井章一の『ぶれない生き方』」(PHP文庫)など、2010年11月は立て続けに6冊が出版され、1月からの合計は16冊になる。

   これまでに60冊近くが出版されている桜井氏の著書は、当初こそ「麻雀必勝法」の類が中心だったが、最近注目されているのは、もっぱらビジネス書。逆境を乗り切るための、「人生の指南本」ともいえる内容だ。読者も、麻雀をやる人ばかりでなく、信奉者が増える企業経営者やアスリートにも広がっていて、ブームともいえる状況だ。

「ホンモノが発する説得力がある」

   講談社はこれまでに、「突破力」「『育てない』から上手くいく」「『頑張らない』から上手くいく」の3冊を発行。売れ行きについて、担当編集者は「人生モノも教育モノもすべて、とてもいいです」という。

   「近代麻雀ゴールド」で桜井章一氏をモデルにした漫画や、コラムを執筆してもらっていた竹書房は2010年11月に、「瞬間力」「人は八割方悪である」「勝ち負けを超えた誇り」の3冊を出版した。いずれもビジネス書で、滑り出しも「まずまず好調です」と話している。

   麻雀本から「転身」した桜井氏について、担当編集者は「混沌とした時代の中で、ホンモノが発する説得力がある」という。「(ビジネス書では)麻雀のイメージにとらわれていると意外に思えるのでしょうが、桜井氏はギャンブラーではありません。勝負への心がまえや、それが転じて人生論、生き方を話しますが、そういった氏の言葉は、ビジネスや子育てにも通じる力をもっているのです」と続ける。

   それもあって、竹書房では12月17日には、絵本「いのちより大切なもの」を出版する。「自分の子どもに読み聞かせる本として、子育て世代に手にとってもらいたい1冊」と、編集者は自信をみせる。

「自然と一体化している不思議さ」が魅力

   「桜井章一 本」の読者は20歳代後半~40歳の男性が中心。景気や雇用の悪化で将来への不安や、閉塞感が漂う社会のなかで、「苦境脱出のヒント」を得ようとしている人たちのようだ。

   幻冬舎が2010年5月末に発行した「ツキの正体」はこれまでに4万4000部が売れた。編集者によると、「読者は桜井さんの人柄に惹かれる」という。この書は、麻雀で負けたことのない桜井氏が「運」や「ツキ」の考え方や心のあり様などについて述べているが、「決して上から目線ではなく、仲間に話しかけるように説いているんです。だから、わかりやすいし、共感できる部分が多いのではないでしょうか」とみている。

   実際の桜井氏は、損得は考えず、ずるいことが大嫌い。

「すがすがしさというか、直観的な感性が研ぎ澄まされていて、それでいて自然と一体化しているような不思議さがあるんです」

   桜井氏の著書を手にした人が2冊、3冊と読みすすめることは少なくないようで、ブームはしばらく続きそうだ。